ハッブル宇宙望遠鏡によって、冥王星のまわりにふたつの新しい衛星候補が発見されました。
太陽系の外縁部であるエッジワース・カイパー・ベルトには、すでに1000個に迫る勢いで新しい天体が発見されつつあります。冥王星が存在するような太陽から遠方の領域では、惑星へと成長する速度が遅いため、惑星の材料物質が吹き払われた時点でも、大きな惑星ができなかったと考えられています。惑星への成長過程で多数残されてしまったのが、これらエッジワース・カイパー・ベルト天体群です。
その衝突過程を示す証拠ともいえるのが、これらの天体群の中に衛星を持っている率が多いという事実です。相互衝突によって惑星がどんどん集積していくわけですが、なかには衝突の過程で相互に周囲を回る軌道となり、衛星となってしまうケースも考えられるのです。冥王星には1978年に衛星カロン(Charon)が発見されました。その後、他のエッジワース・カイパー・ベルト天体にも衛星が続々と見つかっています。しかし、これまで衛星が複数個発見された天体はありませんでした。
ハッブル宇宙望遠鏡が、今年の5月15日と18日に冥王星を撮影したところ、冥王星からの距離が約4万3000キロメートルのところに、ふたつの天体が発見されました。この距離は、これまで知られていた衛星カロンと冥王星の距離の2から3倍に相当します。しかも、これらのふたつの天体は、まるで冥王星を周回しているように動いていたのです。これらの候補天体は、いまのところ S/2005 P1 および S/2005 P2 と符号が与えられました。今回の観測結果を受け、これらの候補天体が本当に衛星なのかどうかを確かめるために、来年2月に再びハッブル宇宙望遠鏡を向け、観測する予定となっています。
これらの二つの新衛星候補が追観測で確認されれば、複数個の衛星を持つはじめてのエッジワース・カイパー・ベルト天体の例となり、冥王星の成長や衛星の起源を考える上で重要な情報を与えるに違いありません。なお、新しい衛星の名前は確認後に国際天文学連合で議論される予定です。
2005年11月3日 国立天文台・広報室