21年ぶりの反復新星、肉眼で見える明るさまで増光中!

 愛知県稲沢市の広沢憲治(ひろさわけんじ)さんから、国立天文台広報室(新天体)に届いた情報によりますと、群馬県伊勢崎市の金井清高(かないきよたか)さんと、愛媛県喜多郡の成見博秋(なるみひろあき)さんのお二方が、へびつかい座にある反復新星、RS星(RS Oph)が増光中であることを観測から確認しました。この情報は広沢さんによって、国際天文学連合に報告されました。

 その位置とお二方が観測された確認時間(世界時間)と明るさは、

  赤経: 17時50分13.2秒   赤緯: -6度42分28.4秒 (2000年分点)

       日 時      等級(実視)    観測者
     2月12日19時54分    4.5     M.Narumi
     2月12日20時20分    4.6     K.Kanai
     2月12日20時30分    4.5     K.Kanai
     2月12日20時41分    4.4     K.Kanai

です。

 新星とは、数日のうちに10等星近くも明るくなり、その後緩やかに減光し、爆発前の状態にもどるものをいい、新しく星が誕生するものではありません。近くを回り合う連星の一方が白色矮星であるときに、もうひとつの星から白色矮星表面にガスが降り積もって、それが核爆発を起こしたものです。新星というのは本質的に繰り返す現象なのですが、繰り返し周期は天体によって違い、長いものだと数万年以上あるいは再び爆発することがないものもあると考えられています。一方、頻繁なものでは10年ほどの間隔で増光を繰り返すこともあり、2回以上明るくなる現象が捉えられたものは「反復新星」あるいは再発新星、再帰新星などともと呼ばれています。反復新星は、これまでに10例弱しか知られていない、かなり貴重な天体です。この反復新星のうち、肉眼で見えるほど明るくなるものは、かんむり座Tとへびつかい座RSの2つしかありません。

 今回明るくなったのは、後者です。12日朝(日本時)にはまだ11等ほどだったのが、13日朝には、上記の二人のアマチュア天文家によって4.5等と報告されています。今回の新星は1898年に出現し、過去に4回、最近では1985年に爆発を起こしています。

 九州大学の山岡均(やまおかひとし)さんによれば、「観測者の間で値に系統的な差がある可能性が高いので、へびつかい座RSが今増光中なのか、それとも減光中なのかはまだ確言できないが、過去の噌光時の光度変化からすると、現在がもっとも明るい時期で、これから一日あたり0.1等の割合で、暗くなっていくのではないか。明け方の見えにくい位置にあるが、ここ数日は肉眼でも捉えられるほどの明るさで推移するので、このチャンスを逃さないよう観測すると面白いだろう」と述べています。

 成見さんはベテランの変光星観測者で、「変光星の目視測光25万点」の功績により、第1回日本天文学会天文功労賞を受賞されています。また、やはり反復新星であるさそり座Uの増光(1979年)を捉えたこともあります。

 金井さんもベテランの天体観測者で、1970年には大道-藤川彗星(C/1970 B1(Daido-Fujikawa))の世界最初の発見者として、日本天文学会天体発見賞を受賞されています。

 このような貴重な現象を、いち早く発見する日本のアマチュア天文家のレベルの高さは世界に誇って良いでしょう。

参照

2006年2月14日         国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)