新星は、近くを回り合う連星の一方が白色矮星であるときに、もうひとつの星から白色矮星表面にガスが降り積もって、それが核爆発を起こしたものです。したがって、新星というのは本質的に繰り返す現象なのですが、繰り返し周期は天体によって違い、長いものだと数万年以上しないと再び爆発しないと考えられています。一方、頻繁なものでは10年ほどの間隔で増光を繰り返すこともあり、2回以上明るくなったところが観測された新星は「反復新星」(再発新星、再帰新星などとも言う)と呼ばれます。反復新星は、これまでに10例弱しか知られていない、かなり貴重な天体です。
反復新星のうち、肉眼で見えるほど明るくなるものは、かんむり座Tとへびつかい座RSの2つしかありません。このたび、へびつかい座RSが、21年ぶりとなる増光を迎えました。
増光を世界に先駆けて捉えたのは、愛媛県の成見博秋(なるみひろあき)さんと、群馬県の金井清高(かないきよたか)さんです。12日朝(日本時)にはまだ11等ほどだったこの天体が、13日の朝、12.83日世界時には、4.5等という、肉眼でも見える明るさになっていたのです。
これまでに報告されている明るさの推移は以下の通りです。
2006年2月 明るさ 観測者 (日, 世界時) (等) 9.826 10.5 成見 11.862 11.0 金井 12.829 4.5 成見 12.847 4.6 金井 12.854 4.5 金井 12.862 4.4 金井 12.868 4.4 金井 12.875 4.4 金井 13.163 4.8 W. Renz (ドイツ) 13.181 4.8 W. Renz 13.214 4.8 W. Renz 13.235 4.8 W. Renz
です。観測者の間で値に系統的な差がある可能性が高いので、へびつかい座RSが今増光中なのか、それとも減光中なのかはまだ確言できませんが、過去の噌光時の光度変化からすると、現在がもっとも明るい時期で、これから急速に暗くなっていく(0.1等/日くらい)ものと思われます。明け方の見えにくい位置にありますが、ここ数日は肉眼でも捉えられるほどの明るさで推移するので、このチャンスを逃さないよう観測すると面白いでしょう。
なお、成見さんはベテランの変光星観測者で、第1回日本天文学会天文功労賞を「変光星の目視測光25万点」の功績で受賞されています。また、やはり反復新星であるさそり座Uの増光(1979年)を捉えたこともあります。金井さんは、やはりベテランの天体観測者で、1970年には大道-藤川彗星(C/1970 B1(Daido-Fujikawa))の世界最初の発見者として、日本天文学会天体発見賞を受賞されています。両氏の長年の観測とその成果には頭が下がるばかりです。
参考文献
- CBET 399 (2006 Feb. 13)
- vsolj-obs 19994の記事(広沢 憲治氏)
2006年2月13日