冥王星より大きな天体 2003 UB_313 の直径の推定

 昨年の国立天文台アストロ・トピックス(126)で紹介した天体 2003 UB_313 について、新しい観測結果が発表され、その直径が約3000キロメートル(誤差プラスマイナス400キロメートル)と、太陽系第9惑星である冥王星(直径約2400キロメートル)よりも大きいことが確実となりました。

 この天体は、太陽系外縁部に存在するエッジワース・カイパー・ベルトに属する天体の一つで、冥王星もその仲間です。公転周期は557年で、現在は太陽から97天文単位、約145億キロメートルの彼方にあります。遠方にもかかわらず、18.5等と、これまで発見された太陽系外縁部の小天体群の中では飛び抜けて明るいことから、太陽の光の反射率を考えると、その直径は冥王星よりも大きいことは確実だ、と発見者グループも気づいていました。しかし、NASAの赤外線宇宙望遠鏡スピッツァーによる観測では、この天体からの赤外線をとらえられず、正確な直径の推定ができていませんでした。

 ドイツ・ボン大学のベルトルディ(Bertoldi, F.)らの研究グループは、スペインにある直径30メートルのパラボラアンテナを持つ電波望遠鏡によって、2005年8月19日から28日の間にかけて、何度かこの天体の観測を行い、210ギガヘルツから290ギガヘルツ帯(波長1.2ミリメートル)の電波によって、この天体からの熱放射をとらえるのに成功しました。

 天体は太陽の光を受けて暖まります。暖まった天体は、温度に依存した赤外線や電波を放射します。これが熱放射です。表面の物質によって、光の反射率が異なりますので、その天体がどれだけ暖まるかは、反射率に依存します。反射率が高ければ、それだけ反射する光が多いため、天体は暖まりません。一方、反射率が低ければ、可視光をより多く吸収するので、温度は高くなります。したがって、熱放射の量と反射する可視光の量を同時に計測すれば、反射率と直径が決められるのです。彼らの結果では、反射率は0.6(プラスマイナス0.15)で、かなり高いことがわかりました。これは冥王星に匹敵する値で、表面にはメタンなどが凍りついていると予想されます。

 ところで、今回の直径の推定値が冥王星より大きかったことで、一部には第十惑星と呼ぶことになるのでは、と期待する向きもあるようですが、これは早計でしょう。多くの天文学者は、大きさだけで惑星と呼ぶべきではないと考えており、冥王星は惑星と呼ぶに値しない、という意見もあります。この領域には、このような天体が今後も続々と発見される可能性は高く、その都度、惑星を増やしていくのには強い抵抗があるのは確かです。いずれにしろ、国際天文学連合での議論を待つことになるでしょうが、仮に第十惑星として正式に承認されるとしても、まだまだ先の話となるでしょう。

参照

2006年2月2日 国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)