カリフォルニア工科大学のブラウン(Mike Brown)博士らの研究チームは、太陽系で10番目の惑星の可能性がある候補天体を発見したことを公表しました。
この天体は、2003年10月31日にアメリカ・カリフォルニア州のパロマー山天文台の口径1.2メートルのシュミット望遠鏡で撮影されていましたが、天体の距離が遠く、みかけの動きがあまりにも小さかったため、気づかれませんでした。今年1月に、データを再解析した研究チームは、その明るさからかなり大きな天体であると判断し、それ以後7カ月間にわたり、軌道決定を行うなどの追観測を行い、2003 UB_313 という符号が付けられました。国際天文学連合が発表した軌道は次のとおりです。
近日点通過時刻 = 2257 Jan. 26.1837 TT 近日点引数 = 151.3115 度 軌道離心率 = 0.441613 昇交点黄経 = 35.8750 度 (2000年分点) 近日点距離 = 37.808 AU 軌道傾斜角 = 44.1770 度
この天体は現在、太陽から97天文単位、約145億キロメートルの彼方にあるとされています。それにしては明るさが18.5等と、これまで発見された太陽系外縁部の小天体群の中では飛び抜けて明るい天体です。太陽の光の反射率を考えても、その直径は冥王星よりも大きいことは確実です。一方、NASAの赤外線宇宙望遠鏡スピッツァーによる観測では、この天体からの赤外線はとらえられなかったので、直径の上限値は約3200キロメートルと考えられます。
公転周期は557年で、2257年には太陽に37.8天文単位まで近づくと計算されています。この場所は太陽系外縁部に存在するエッジワース・カイパー・ベルトと呼ばれる小天体群が分布する領域です。したがって、この天体も冥王星と同様、この小天体群のひとつと考えてよいでしょう。この天体の特徴として、軌道面が惑星が存在する黄道面に対して44度も傾いていることがあげられます。これは冥王星よりも大きな傾きで、エッジワース・カイパー・ベルト天体の中でも特異といえるでしょう。
ところで、今回の発見を大々的に発表したアメリカ航空宇宙局(NASA)では、この天体が第十惑星と呼ばれることを前提としているようですが、これはいささか判断が分かれるところでしょう。惑星と呼ぶかどうかは、同じような領域にある他の天体の有無や、大きさなどを勘案して、国際天文学連合で議論され、最終的に決定されることになります。実は今回、この候補天体と同時に 2003 EL_61 および 2005 FY_9 という、やはり大きなエッジワース・カイパー・ベルト天体の発見も公表されています。今後も続々と、同じような大きさの天体が、この領域に見つかる可能性は否定できません。その場合、それらをすべて惑星と呼ぶような事態は避けなくてはならないでしょう。その意味でも、この天体が第十惑星として仮に正式に承認されるとしても、それはまだまだ先の話となるでしょう。ただ、今回の一連の発見が、太陽系に新しい広がりをもたらし、さらにその先へと期待をつなぐことになったことは確かです。
2005年7月30日 国立天文台・広報普及室
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