おおかみ座に明るい新星が出現

著者:前原裕之(国立天文台)

てんびん座の南に位置するおおかみ座は、日本からは梅雨の時期に南のごく低い空に見える星座のため、あまり馴染のない星座かもしれません。そんなおおかみ座の中に明るい新星が発見され、肉眼等級にまで明るくなっています。新星を発見したのはオハイオ州立大学を中心としたAll-Sky Automated Survey for Supernovae (ASAS-SN)のグループで、6月12.87日(世界時、以下同様)におおかみ座の中に8.7等級の新天体(ASASSN-25cm = AT 2025nlr)を発見しました。この天体の位置は

赤経: 15時 08分 03.27秒
赤緯: -40度 08分 29.6秒   (2000.0年分点)

です。

6月14.745日には南アフリカ天文台の口径1m遠鏡を用いたこの天体の分光観測が行なわれ、この天体のスペクトルにはP Cygプロファイルを持つ水素のバルマー系のほか、中性ヘリウムまたは一階電離した鉄の輝線がみられることが分かりました。これらのスペクトルの特徴から、この天体が古典新星であることが判明しました。

この新星は発見後も増光を続けており、vsolj-obs MLに報告された日本からの観測データによると、16日に6.7等、17日に6.1等、18日には5.8等まで明るくなったことが分かりました。南の低い空で観測しづらい新星ですが、口径4-5cm程度の双眼鏡で見ることができますので、今後どこまで明るくなるのか注目したいところです。

なお、この天体にはおおかみ座V462 (V462 Lup)と変光星名が付きましたので、観測報告にはこの名称を用いて下さい。

2025年 6月19日

新星のスペクトル

新星の光度曲線 (VSOLJ Light Curve Generator)

参考文献

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