3月24日にいて座の中に今年3個目の新星が発見されました。この新星を最初に発見したのは、ロシア連邦カラチャイ・チェルケス共和国に設置したカメラによる銀河面付近の新天体サーベイ"New Milky Way" (NMW) surveyを行なっているグループで、3月24.056日に撮影した画像から、いて座の中に12.2等の新天体を発見しました。また、群馬県の小嶋正(こじまただし)さんも23.764日に撮影した画像からこの天体を13.5等で独立に発見しました。これらの発見発見報告を受けて、山口県の吉本さんやオーストラリアのA. Pearceさんによって確認観測が行なわれ、この天体が24.8日には11等、25.7日には10.6等と発見後も増光しつつあることが分かりました。この天体の正確な位置は
赤経: 18時 02分 21.68秒 赤緯: -33度 10 分 31.8秒 (2000.0年分点)
です。
この天体の分光観測は、3月24.819日に岡山県の藤井さん、24.990日に南アフリカ天文台の口径1m遠鏡を用いてそれぞれ行なわれ、この天体のスペクトルにはP Cygプロファイルをもつ水素のバルマー系列や一階電離したヘリウムの輝線がみられ、P Cygプロファイルの吸収線は、輝線に対して速度に換算して秒速700 km青方偏移していることが分かりました。このようなスペクトルの特徴から、この天体が古典新星であることが確認されました。
vsolj-obs MLやAAVSOに報告された観測データによると、この新星は発見後も増光を続け、3月27.5日には10.3等ほどまで明るくなったようです。今後の明るさの変化が注目されます。なお、この新星にはいて座V7993という変光星名がつきましたので、観測報告をする時はこの名称をお使い下さい。
2025年 3月28日
新星の画像
- NMW Surveyの発見画像
- 吉本さん撮影(確認観測)
http://orange.zero.jp/k-yoshimoto/TCP_J18022164-3310319_20250324.jpg ※リンク切れ
新星のスペクトル
参考文献
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