へびつかい座に新星が出現

著者:前原裕之(国立天文台)

3月10日にへびつかい座の中に新星が発見されました。この新星を最初に発見、報告したのは群馬県の小嶋正(こじまただし)さんで、3月10.775日(世界時; 以下同様)に撮影した画像から11.5等級の新天体を発見しました。さらに、山形県の板垣公一(いたがきこういち)さんや三重県の中村祐二(なかむらゆうじ)さん、愛知県の山本稔(やまもとみのる)さん、香川県の藤川繁久(ふじかわしげひさ)さん、オーストラリアのAndrew Pearceさんもこの天体を独立に発見しました。それぞれの方々の発見日時、等級は以下の通りです。

3月10.772日11.3等Andrew Pearce
10.775日11.5等小嶋正
10.797日11.1等中村祐二
10.807日11.1等山本稔
10.818日10.9等板垣公一
10.825日10.4等藤川繁久

山本さんの観測によると、この天体は発見前日の9.81日には15等よりも暗かったことが分かっています。発見前後の観測結果から、この天体は3月9日から10日にかけての1日ほどの間に急激な増光を始め、まだ明るくなりつつある途中で発見されたものと考えられます。板垣さんの観測によると、この天体の正確な位置は

赤経: 17時39分57.09秒
赤緯: -26度27分41.8秒   (2000.0年分点)

です。

この天体の分光観測は、発見直後の3月10.84日に広島大学の口径1.5m かなた望遠鏡を用いて行なわれました。その結果、この天体のスペクトルにはP Cygプロファイルを示す幅の広い水素のバルマー系列や中性ヘリウムの輝線がみられることが分かり、この天体が爆発直後の古典新星であることが確認されました。今後の明るさの変化が注目されます。

なお、この新星にはへびつかい座V4370(V4370 Oph)との変光星名が付けられましたので、今後の観測報告にはこの名称をお使い下さい 。

2024年 3月13日

新星の画像

参考文献

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