いて座に新星が出現、中村さんが独立発見

著者:前原裕之(国立天文台)

いて座の中に今年3個目の新星が発見されました。最初にこの新星を発見したのはオーストラリアのAndrew Pearceさんで、7月15.459日にいて座を撮影した画像から10.3等の新天体を発見しました。さらに、三重県亀山市の中村祐二さんもこの天体を15.522日に9.6等で独立に発見したことが報告されました。発見者のPearceさんの観測によると、この天体の位置は

赤経: 17時 52分 49.30秒
赤緯: -20度 24分 15.5秒  (2000.0年分点)

です。また、S. Korotkiyさんらのグループによる観測ではこの天体は発見前日の7月14.8日ごろにはすでに13等台に増光しつつあったことが分かりました。

この天体の分光観測はO. Gardeさんら天体のスペクトル観測を行なっているアマチュア天文家グループ2SPOT (Southern Spectroscopic Observatory Team)によって15.979日に行われました。その結果によると、この天体のスペクトルにはP Cygniプロファイルをもつ幅の広い水素のバルマー系列の輝線がみられることが分かりました。また、Hα線のP Cygniプロファイルの吸収成分は輝線のピークに対して秒速4100kmほど青方偏位していることも分かりました。このようなスペクトルの特徴から、この天体が古典新星であることが確認されました。

TOCPやvsolj-obsメーリングリストに報告された吉本さんや清田さん、森山さん、広沢さん、伊藤さんらによる発見後の観測によると、この新星は発見された15日夜には10等台でしたが、16日夜には11等台後半まで急速に暗くなりました。また、AAVSOに報告された観測データによると18日夜には13等まで減光したようです。

この新星にはいて座V6598 (V6598 Sgr) との変光星名が付けられましたので、以後の観測報告にはこの名称をお使い下さい。

2023年 7月19日

参考文献

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