板垣さんがいて座に新星を発見

著者:前原裕之(国立天文台)

山形県の板垣公一(いたがきこういち)さんは、5月16.668日(世界時; 以下同様)に口径10.6cmの屈折望遠鏡を用いていて座を撮影した画像から、12等の新天体を発見しました。発見者の板垣さんご自身の観測によると、この天体の位置は

赤経: 17時 58分 34.14秒
赤緯: -26度 52分 30.0秒  (2000.0年分点)

です。K. Sokolovskyさんらのグループによる観測やAll-Sky Automated Surveyfor Supernovae (ASAS-SN)の観測によると、この天体は板垣さんの発見前から明るくなりはじめ、前日の15.920には13.1等まで増光していたことが分かりました。また、発見報告後の多色測光観測によると、この天体は極めて赤い色をしていることも分かりました。

この天体の分光観測は板垣さんによる発見の直後の5月16.78日に京都大学岡山天文台の3.8mせいめい望遠鏡によって行われました。その結果によると、この天体のスペクトルにはP CygniプロファイルをもつHα線とHβ線、中性酸素の輝線がみられ、Hα線のP Cygniプロファイルの吸収成分は輝線のピークに対して秒速570kmほど青方偏位していることが分かりました。このようなスペクトルの特徴から、この天体が古典新星であることが確認されました。この天体にはいて座V6597 (V6597 Sgr) との変光星名が付けられましたので、観測報告にはこの名称をお使い下さい。

2023年 5月21日

参考文献

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