さそり座に明るい新星が出現、西村さんが独立発見

※Pearceさんの発見日時に誤りがあり、2023年5月1日訂正

著者:前原裕之(国立天文台)

4月20日にさそり座の中に8等級の明るい新星が発見されました。この新星を発見したのはオーストラリアのAndrew Pearceさんで、4月20.678日(世界時; 以下同様)にさそり座を撮影した画像から8.0等の新天体を発見しました。また、静岡県掛川市の西村栄男(にしむらひでお)さんも、20.801日にこの新天体を独立に発見しました。発見者のPearceさんの観測によると、この天体の位置は

赤経: 17時 22分 45.02秒
赤緯: -41度 37分 16.5秒  (2000.0年分点)

です。発見後の観測によると、この天体は21日に7.3等、22日には7.0等まで明るくなり、その後は23日に8.0等、24日に8.3等と暗くなりました。

この天体の分光観測は4月22日にCTIOのSMARTS 1.5m望遠鏡やSouthern Spectroscopic Observatory Project Team (2SPOT)など複数のグループによって行われました。その結果によると、この天体のスペクトルには水素のバルマー系列や一階電離した鉄の輝線がみられ、水素のバルマー系列の輝線は秒速1800kmと3000km、鉄輝線は秒速1800km青方偏位した吸収線が伴っていることが分かりました。このようなスペクトルの特徴から、この天体が古典新星であることが確認されました。 また、フェルミガンマ線宇宙望遠鏡が4月21から22日の間に取得したデータから、この天体の位置に新たなガンマ線を放つ天体が出現したことが分かりました。同様の新星爆発に伴ってガンマ線が検出された例ははくちょう座V407をはじめとして複数報告されており、今後の可視光やX線の明るさの変化とともに注目されます。4月29日までの観測によると、この新星は9等台半まで暗くなっていることが報告されました。日本からは南中時でも高度15度程度にしかならない位置の天体ですが、5月初め頃はまだ口径10-20cm程度の望遠鏡でも見ることができると思われます。

2023年 5月 1日

参考文献

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