板垣さんがこぎつね座に新星を発見

著者:前原裕之(国立天文台)

7月16日にこぎつね座の中に12等級の新たな新星が発見されました。この新星を発見したのは、山形県山形市の板垣公一(いたがきこういち)さんです。板垣 さんは7月16.475日(世界時; 以下同様)に、焦点距離180mmのレンズとCCDカメラを用いて撮影した画像から、こぎつね座の中に12.0等の新天体を発見しました。 この天体は板垣さんご自身によって口径50cm望遠鏡で確認された他、なよろ市立天文台や千葉県の清田さんなど多数の観測者によっても確認観測が行なわれ ました。板垣さんの観測によると、この天体の正確な位置は

赤経: 20時 21分 07.70秒
赤緯: +29度 14分 09.3秒  (2000.0年分点)

で、発見前日の15日に撮影された画像には、この天体の位置には14.2等よりも明るい天体は写っていないことから、この天体はわずか1日ほどの間に明るく なった天体であることが分かりました。

この天体の分光観測は7月16.915日にイギリスのR. Leadbeaterさん、17.102日にイタリアのグループによってそれぞれに行なわれました。それらの結果によ ると、この天体のスペクトルにはP Cygプロファイルを持つ水素のバルマー輝線の他、一階電離した窒素や中性ヘリウムの輝線がみられること、P Cygプロファ イルの吸収線は輝線に対して秒速1400kmほど青方偏移していることなどが分かりました。このようなスペクトルの特徴から、この天体が古典新星であること が確認されました。

発見後の観測によると、この新星は発見後の7月18-19日ごろには13等ほどまで暗くなったものの、その後再び明るくなりはじめ、7月23日夜には12等台前半で 観測されました。今後の明るさの変化などが注目されます。

2021年 7月24日

新星の画像

新星のスペクトル

参考文献

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