上田さんがヘルクレス座に明るい新星を発見

著者:前原裕之(国立天文台)

 6月12日にヘルクレス座の中に明るい新星が発見されました。この新星を発見したのは、北海道釧路市の上田清二(うえだせいじ)さんです。上田さんは6月12.537日(世界時; 以下同様)に、焦点距離200mmのレンズとデジタルカメラを用いて撮影した画像から、ヘルクレス座の中に8.4等の新天体を発見しました。この天体は発見した上田さんご自身によって16cm望遠鏡で確認された他、山形県の板垣さんや北海道の佐野さんほか多数の観測者によっても確認観測が行なわれ、12.6-12.7日には6等級にまで急速に明るくなったことがわかりました。

この天体の正確な位置は

赤経: 18時 57分 30.95秒
赤緯: +16度 53分 39.6秒  (2000.0年分点)

です。

この天体の分光観測はイタリアのグループによって口径0.84mと1.22mの望遠鏡を用いて6月12.84-85日に行なわれ、この天体のスペクトルには秒速3000kmほど青方偏移した幅の広い水素のバルマー系列および中性ヘリウムの吸収線がみられること、Hα線には弱い輝線成分もみられることが分かりました。青方偏移した吸収線はP Cygプロファイルによるものと考えられ、このようなスペクトルの特徴などから、この天体は新星爆発によって放出された物質の膨張速度が大きな古典新星であることが確認されました。

 この新星のような膨張速度の大きな新星は急速に暗くなる性質があることが知られており、今後の明るさの変化やそれに伴なうスペクトルの変化が注目されます。

2021年 6月13日

参考文献

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