いて座に明るい新星が出現

著者:前原裕之(国立天文台)

天の川銀河の中心方向にあるいて座の中にはこれまでも多数の新星が発見されています。先月下旬にも新星(いて座V6594)が発見されたばかりですが、また新たな新星がいて座の中に発見されました。新星を発見したのはオーストラリアのAndrew Pearceさんで、4月4.825日(世界時; 以下同様)に焦点距離100mmのレンズとデジタルカメラで撮影した画像から8.4等の新天体を発見しました。この天体はオーストラリアのMacNaughtさんが4.639日に撮影した画像にも8.9等で写っていたことが分かりました。明るい天体であったことから千葉県の清田さんや山口県の吉本さん、福井県の小林さんほか多数の観測者による観測報告がありました。発見後の詳しい観測によると、この天体の正確な位置は

赤経: 17時 58分 16.06秒
赤緯: -29度 14分 56.5秒  (2000.0年分点)

です。

この天体の分光観測は発見翌日の4月5.750日に岡山県の赤澤さんによって口径35cmの望遠鏡を用いて行なわれたほか、5.828日には京都大学岡山天文台の3.8mせいめい望遠鏡によっても行なわれ、この天体のスペクトルにはP Cygプロファイルを持つHα輝線の他、P Cygプロファイルの吸収線成分と同じ速度(およそ1000km/秒)だけ青方偏移した一階電離した鉄の吸収線がみられることが分かりました。このようなスペクトルの特徴から、この天体が古典新星であることが判明しました。

この新星は4月5.8日(日本時間では6日明け方)ごろには7.7-7.8等ほど、6.8日(同7日明け方)には8等ほどで観測され、口径5cm程度の双眼鏡があれば見ることができる明るさまで増光しました。なお、この新星にはいて座V6595という変光星名がつけられましたので、今後の観測報告ではこの名称をお使い下さい。

2021年 4月 7日

新星の画像

新星のスペクトル

参考文献

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