上田さんがペルセウス座に新星を発見

著者:前原裕之(国立天文台)

 11月25日(日本時間では26日明け方)にペルセウス座の中に明るい新星が発見さました。新星を発見したのは北海道釧路市の上田清二(うえだせいじ)さんです。上田さんは11月25.807日(世界時; 以下同様)に焦点距離200mmのレンズとデジタルカメラを用いてペルセウス座を撮影した画像から、10.6等の新天体を発見しました。また、ロシアのKa-Dar天文台のS. Korotkiyさんらのグループもこの天体を25.844日に独立に発見しました。静岡県の金子さんの観測によると、この天体は上田さんの発見の4.6時間前にはまだ14.9等より暗く、ごく短時間のうちに急激に明るくなったことが分かりました。

発見の報告を受けて、清田さんや吉本さん、佐野さん、野口さん、なよろ市立天文台など多数の観測者によって、この天体の確認観測が行なわれました。発見後の詳しい観測によると、この天体の正確な位置は

赤経: 04時 29分 18.85秒
赤緯: +43度 54分 23.0秒  (2000.0年分点)

です。

 この天体の分光観測は11月26.05日にU. Munariさんらのグループによって行なわれ、この天体のスペクトルにはP Cygプロファイルを持つ水素のバルマー系列の輝線がみられることが分かりました。このようなスペクトルの特徴からこの天体が極大付近の古典新星であることが判明しました。

 この新星は発見後も増光を続け、11月28日ごろには8.5等まで明るくなりました。11月29日の時点でもまだ8等台後半とそれほど暗くなっておらず、ここ数日は口径8cm程度の望遠鏡があれば眼視的に見ることができると思われます。今後の明るさの変化などが注目されます。なお、この新星にはペルセウス座V1112という変光星名がつけられましたので、観測報告をする場合はこの名称をお使い下さい。

2020年11月30日

新星の画像

新星のスペクトル

参考文献

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