いて座に新星が出現

著者:前原裕之(国立天文台)

 天の川銀河の中心方向に見えるいて座の中にはこれまでに多数の新星が発見されています。今年に入ってからだけでもいて座の中にはすでに3個の新星が発見されていますが、10月2日に4個目の新たな新星が発見されました。新星を発見したのはBrazilian Transient Search (BraTS)のグループで、10月2.980日(世界時; 以下同様)に、口径28cmの望遠鏡で撮影した画像から、いて座の中に11.1等の新天体を発見しました。この天体の正確な位置は

赤経: 17時 55分 00.00秒
赤緯: -21度 22分 40.1秒  (2000.0年分点)

です。

この天体の分光観測は10月4.75日に南アフリカのSALTを用いて行なわれ、この天体のスペクトルにP Cygプロファイルを持つ水素のバルマー系列や中性酸素、一階電離した鉄、中性ナトリウムの輝線がみられることが分かりました。このようなスペクトルの特徴から、この天体が極大光度直前ごろの古典新星であることが判明しました。

 VSOLJに報告された観測によると、この天体は10月5-6日ごろには10等級まで明るくなりました。この新星にはいて座V6593という変光星名がつけられましたので、観測報告をする場合はこの名称をお使い下さい。

2020年10月9日

新星の画像(清田さん)

参考文献

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