小嶋さんと西村さんがさそり座に新星を発見

著者:前原裕之(国立天文台)

 9月8日の夕方に新たな新星がさそり座の中に発見されました。新星を発見したのは群馬県嬬恋村の小嶋正(こじまただし)さんと、静岡県掛川市の西村栄男(にしむらひでお)さんです。小嶋さんは9月8.423日(世界時; 以下同様)に撮影した画像から、西村さんは8.447日に撮影した画像から、それぞれ独立に12等級の新天体を発見しました。発見の報告を受けて、千葉県の野口さんや山口県の吉本さん、千葉県の清田さんらによって観測が行なわれ、この天体が赤い色をしていることや、9月9日には13等級、11日には14等級と急速に暗くなっていることが分かりました。この天体の正確な位置は

赤経: 17時 23分 41.93秒
赤緯: -31度 03分 07.6秒  (2000.0年分点)

です。

 この天体の分光観測は岡山県の藤井さんによって9月10日に行なわれ、この天体のスペクトルには幅の広いHα輝線がみられることが分かりました。また、藤井さんが13日と14日に行なった分光観測や、南アフリカの口径11m望遠鏡SALTによって14日に行なわれた分光観測によると、水素のバルマー輝線の他に、中性酸素やヘリウム、一階電離した鉄など輝線がみられるようになったことが分かりました。さらに、天の川の方向に見える重力マイクロレンズ現象や変光星の探査を行なっているOGLEのデータから、この新天体と同じ位置の16等ほどの赤い天体が、増光の前には周期140日ほどの変光を示していたことが分かりました。このようなスペクトルの特徴や増光前の変光の様子から、この天体は共生星と呼ばれる白色矮星と赤色巨星から成る連星系で、白色矮星の表面で起こった新星爆発によって急激に明るくなったと考えられます。

2020年9月18日

新星の画像

新星のスペクトル

参考文献

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