藤川さんがいて座に新星を発見

著者:前原裕之(国立天文台)

 天の川の方向に見えるいて座には、これまでも多数の新星が発見されており、今年に入ってからだけでも2つの新星が発見されています。そのいて座の中に新たな新星が発見されました。新星を発見したのは香川県観音寺市の藤川繁久(ふじかわしげひさ)さんです。藤川さんは、7月16.519日(世界時; 以下同様)に焦点距離120mmのレンズとCCDカメラを用いて撮影した画像からいて座の中に9.9等の新天体を発見しました。この天体は千葉県の清田さんや山口県の吉本さんらによって確認されたほか、オーストラリアのJ. Seachさんによると、発見の前日の7月15.381日にはすでに9.5等に増光していたことが報告されました。
 確認観測によるとこの天体の詳細な位置は
赤経:17時 58分 08.46秒
赤緯:-30度 05分 35.8秒  (2000.0年分点)
です。
 7月16.97日にはこの天体の分光観測が口径10mの南アフリカ大型望遠鏡(SALT)で行なわれました。その結果、この天体のスペクトルには幅の広い水素のバルマー系列の輝線の他、中性酸素や1階電離した鉄、中性ナトリウムの輝線がみられ、Hα輝線の幅は秒速4500kmにも広がっていることが分かりました。このようなスペクトルの特徴から、この天体が古典新星であることが判明しました。
 vsolj-obsなどに報告された観測結果によると、7月17日には10等台まで暗くなったことが報告されました。分光観測の結果からは、新星爆発による膨張速度が大きく、急速に減光するタイプの新星であることが示唆されます。今後の減光の様子が注目されます

2020年7月18日

参考文献

新星の画像

※ この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、VSOLJニュースのメーリングリスト vsolj-news にご加入いただくと便利です。購読・参加お申し込みは ml-command@cetus-net.org に、本文が subscribe vsolj-news と書かれたメールを送信し、返送される指示に従ってください。なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。