いて座に新星が出現

著者:前原裕之(国立天文台)

銀河中心方向に見える星座のいて座の中には、これまでにも多数の新星が発見されてきましたが、6月に入って新たな新星が発見されました。この新星はオハイオ州立大学を中心とするAll-Sky Automated Survey for Supernovae (ASAS-SN,"Assassin")のグループによって6月2.26日に15。3等級の新天体ASASSN-20gaとして発見されました。また、口径30cmの望遠鏡を使って近赤外線でサーベイ観測を行っているPalomar Gattini-IRによっても、6月1.430日にJ-band(波長 1.25μm)で11.2等級の新天体PGIR20dsvとして発見されました。さらに、この天体は5月31.418日にはパロマー天文台の1.2mシュミット望遠鏡で行われているZwicky Transient Facility (ZTF)によって15.8等に増光した天体ZTF20abdpwstとして検出されていたことも分かりました。この天体の位置は

赤経: 18時22分45.33秒
赤緯: -19度36分02.3秒  (2000.0年分点)

です。

この天体の分光観測は、6月8日にパロマー天文台の1.5m望遠鏡で行われ、水素のバルマー系列に加え、中性酸素の輝線がみられたことから、古典新星であることが判明しました。また、ハワイにある口径3.2mIRTF望遠鏡で行われた近赤外線分光観測によると、P Cygniプロファイルを持つ水素の輝線がみられ、P Cygniプロファイルの吸収成分は輝線成分に対して370km/sほど青方偏移していることがわかりました。

この新星は星間吸収の影響を受けていることもあり、発見された時には可視光で15等と暗かったものの、発見後もゆっくりと増光を続け、6月14日には13。1等まで明るくなりました。今後の明るさの変化が注目されます。

2020年06月17日

参考文献

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