西村さんがへび座に新星を発見

著者:前原裕之(国立天文台)

へび座はへびつかい座によって頭部と尾部に分断された星座で、へび座の尾部は天の川の方向にあり、これまでにもいくつもの新星が発見されています。そんなへび座の中に新星が発見されました。新星を発見したのは静岡県掛川市の西村栄男(にしむらひでお)さんです。西村さんは2月22.839日(世界時; 以下同様)に焦点距離200mmのレンズとデジタルカメラを用いて撮影した画像から、へび座の中に12.1等の新天体を発見しました。この天体は西村さんが発見2日前の20.860日に撮影した画像には写っておらず、発見のこの2日ほどの間に明るくなった天体であることが分かりました。また、群馬県の小嶋さんが22.811日に撮影した画像にも、この天体が11.8等で写っていたことが分かりました。千葉県の野口さんや清田さんの観測によると、この天体の正確な位置は

赤経: 18時10分42.32秒
赤緯: -15度34分18.6秒  (2000.0年分点)

で、赤い色をした天体であることが分かりました。

この天体の分光観測は、2月23.38日にラスカンパナス天文台の口径2.5mデュポン望遠鏡で、23.862日には京都大学岡山天文台の口径3.8mせいめい望遠鏡でそれぞれ行なわれました。この天体スペクトルにはP Cygniプロファイルを示す幅の広い水素のバルマー系列や1階電離した鉄などの輝線がみられたことから、極大直後の古典新星であることが判明しました。P Cygniプロファイルの吸収成分は、輝線成分に対して秒速5000kmほど青方偏移しており、比較的速い減光を示す新星であると考えられます。この新星は23.8日には13等ほど、24.3日には13.8等、25.5日には14.5等と急速に減光したことが観測されました。今後の明るさの変化が注目されます。なお、この新星にはへび座V670(V670 Ser)との変光星名が付けられましたので、観測報告をされる際にはこの名称をお使い下さい。

2020年02月26日

参考文献

新星の画像

新星のスペクトル

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