8月の明け方には、早くも冬の星座として有名なオリオン座が、東の低い空に姿を見せ始めます。そんなオリオン座の中に新星が発見されました。新星を発見したのは、香川県観音寺市の藤川繁久(ふじかわしげひさ)さんです。藤川さんは、8月7.7984日(世界時; 以下同様)に焦点距離120mmのレンズとCCDカメラを用いて撮影した画像から、9.4等の新天体を発見しました。藤川さんの観測によると、
この天体の位置は
赤経:06時 09分 57.40秒 赤緯:+12度 12分 25.5秒 (2000.0年分点)
です。この天体は、発見翌日の8月8.8日に山口県の吉本さんや愛知県の広沢さん、千葉県の清田さん他の方々によって確認され、10.5等級ほどに減光した様子が観測されました。
8月14.44日には、この天体の分光観測がチリのセロ・トロロ天文台の口径4.1mSOAR望遠鏡を用いて行なわれました。この天体のスペクトルには、幅の広い水素のバルマー系列の輝線の他ヘリウムや窒素、酸素の輝線がみられ、Hα輝線の幅は速度にして秒速4000km程度になることが分かりました。このようなスペクトルの特徴から、この天体が極大を過ぎた古典新星であることが判明しました。
vsolj-obsなどに報告された観測結果によると、この天体は発見以降減光を続けており、8月13日には11.8等ほどまで暗くなったことが報告されました。分光観測の結果からは、新星爆発によって膨張する物質の速度が大きく、速く減光するタイプの新星であることが示唆されます。今後の減光の様子のほか、X線やガンマ線などでの観測結果が注目されます。
2019年8月16日
参考文献
- CBAT "Transient Object Followup Reports" PNV J06095740+1212255
- vsolj-obs 62229, 62230, 62245, 62259, 62284, 62297, 62305
- Aydi, E., et al. 2019, ATel #13027
- Sokolovsky, K., et al. 2019, ATel #13029
新星の画像
新星の光度曲線 (VSOLJ Light Curve Generator)
※ この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、VSOLJニュースのメーリングリスト vsolj-news にご加入いただくと便利です。購読・参加お申し込みは ml-command@cetus-net.org に、本文が subscribe vsolj-news と書かれたメールを送信し、返送される指示に従ってください。なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。