櫻井さんがたて座に新星を発見

著者:前原裕之(京都大学)

天の川の中に見える星座の1つでいて座やわし座、へび座に囲まれた比較的小さな星座のたて座の中に新星が発見されました。新星を発見したのは茨城県水戸市の櫻井幸夫(さくらいゆきお)さんです。櫻井さんは6月29.5768日(世界時; 以下同様)に焦点距離180mmのレンズとデジタルカメラを用いて撮影した画像から10.3等級の新天体を発見しました。6月23日に櫻井さんが撮影した画像にはこの天体は写っておらず、この1週間ほどの間に明るくなった天体であることが分かりました。発見を受けて清田さんや吉本さん、野口さん他によって行なわれた観測によると、この天体の正確な位置は

赤経:18時29分22.93秒
赤緯:-14度30分43.9秒  (2000.0年分点)

です。これは、昨年発見され8等台まで明るくなった新星たて座V612(=ASASSN-17hx; vsolj-news 333)のすぐ近くです。

この天体の分光観測は6月30日に天体のスペクトル観測を精力的に行なっているヨーロッパを中心としたアマチュアの観測者を含むグループによって行なわれ、P Cygプロファイルを持つHαや一階電離した鉄の輝線の他、青方偏移したHβ、ナトリウム、マグネシウムなどの吸収線がみられることが分かりました。これらのスペクトルの特徴から、この天体が古典新星であることが判明しました。その後の観測によると、この天体は7月1日には10.6-10.8等ほど、2日には11.2-11.4等ほどと、発見時よりも暗くなったことが報告されました。今後の明るさやスペクトルの変化が注目されます。

2018年7月3日

参考文献

新星の画像

新星のスペクトル

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