中村さんがペルセウス座V392の新星爆発を発見

著者:前原裕之(京都大学)

古典新星は白色矮星の主星と低温の星(ロッシュローブを満たした晩期型スペクトルの主系列星、または赤色巨星)の伴星から成る連星系で、伴星から主星の白色矮星表面に水素が降り積もり、密度や温度が高くなると積もった水素が暴走的な核反応を起こすことで増光すると考えられています。古典新星の極大時の絶対等級は典型的には-6から-9等ほどで、新星爆発によって爆発前の明るさに比べて8から19等ほども明るくなります。

白色矮星の主星とロッシュローブを満たした晩期型スペクトルの主系列星の伴星から成る連星の中には、白色矮星の周りに降着円盤と呼ばれるガス円盤を持ち、この円盤の明るさの変化に起因する新星よりも小規模な増光を短期間(短いものでは数日)のうちに繰り返す、「矮新星」と呼ばれる天体も知られています。ペルセウス座V392もこうした矮新星の1つで、1970年にゾンネベルク天文台のRichterによって15等から17等ほどを変光する矮新星らしい天体として発見されました。その後は特に注目を浴びることはありませんでしたが、この天体が新星爆発を起こして6等級に増光していることが発見されました。増光を発見したのは、三重県亀山市の中村祐二(なかむらゆうじ)さんです。中村さんは4月29.474日(世界時; 以下同様)に焦点距離135mmのレンズとCCDカメラを用いて撮影した画像から、ペルセウス座の中に6.2等級の新天体を発見しました。この天体の位置はペルセウス座V392の位置に一致していました。この天体の位置は

赤経 04時 43分 21.37秒
赤緯 +47度 21分 25.9秒  (2000.0年分点)

です。

この天体の分光観測は、4月29.58日になよろ市立天文台と北海道大学のグループによって1.6mピリカ望遠鏡を用いて行なわれた他、キット・ピークのMDM天文台の2.4m望遠鏡などでも行なわれ、この天体のスペクトルにはP Cygプロファイルを示す幅の広いHαや1階電離した鉄の輝線がみられることや、Hα線のP Cygプロファイルの吸収成分は輝線成分に対して秒速2680kmも青方偏移していることなどが分かりました。これらのスペクトル特徴からペルセウス座V392の増光が新星爆発によって引き起されたものであることが判明しました。また、フェルミ ガンマ線宇宙望遠鏡の4月30日の観測によると、この天体の位置に新たなガンマ線を放つ天体が出現したことが分かり、ペルセウス座V392の新星爆発によるものであると考えられています。

矮新星も新星と同じく白色矮星とロッシュローブを満たした主系列星の伴星から成る連星であり、伴星の物質が主星へと流れ込んでいる天体なので、主星である白色矮星の表面に十分な水素が降り積もれば新星爆発を起こすと考えられています。実際、新星として発見された天体の爆発前のデータを詳しく調べてみると、矮新星としての増光を起こしていたことが明らかになった天体(ケンタウルス座V1213 = ケンタウルス座新星2009)や、新星爆発後しばらくしてから矮新星としての増光が観測されるようになった天体(ペルセウス座GK = ペルセウス座新星1901やへび座X = へび座新星1903)、過去に新星爆発を起こした痕跡が発見されている矮新星(きりん座Zやかに座AT)も知られいますが、矮新星として変光星名が付いていた天体で新星爆発が起こったのは、今回のペルセウス座V392が初めてです。

5月1日の観測によると、この天体は8等ほどまで減光しており、発見後急速に暗くなっていますが、今後の測光や分光観測の結果が楽しみな天体と言えるでしょう。

2018年5月2日

参考文献

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