へびつかい座に新たな新星が出現

著者:前原裕之(京都大学)

私達の天の川銀河の中心方向に見える星座の1つのへびつかい座の中に、新たな新星が発見されました。新星を発見したのは福岡県久留米市の西山浩一(にしやまこういち)さんと佐賀県みやき町の椛島冨士夫(かばしまふじお)さんのチームと、静岡県掛川市の西村栄男(にしむらひでお)さん、群馬県嬬恋村の小嶋正(こじまただし)さんです。西村さんは3月10.805日(世界時; 以下同様)に焦点距離200mmのレンズとデジタルカメラで撮影した画像から、小嶋さんは10.807日に撮影した画像から、西山さんと椛島さんのチームも10.814日に焦点距離120mmのレンズとCCDカメラを用いて撮影した画像から、それぞれ独立に9.5等の新天体を発見しました。また、福岡県の高尾さんが10.753日に撮影した画像にもこの天体が9.5等で写っていたことが報告されました。西山さんと椛島さんが発見直後に口径50cmの望遠鏡を用いて行なった確認観測によると、この天体の正確な位置は

赤経: 17時 14分 02.53秒
赤緯: -28度 49分 23.3秒  (2000.0年分点)

です。

スペインのカナリア諸島にある口径2mの望遠鏡で行なわれたこの天体の分光観測によると、この天体のスペクトルにはP CygプロファイルをもつHαや中性酸素の輝線がみられる他、1階電離した鉄などが吸収線としてみられることが分かりました。これらの特徴からこの天体が爆発の初期段階にある古典新星であることが判明しました。岡山県の赤澤さんによる分光観測でもP Cygプロファイルをもつ強いHα輝線がみられる同様の結果が得られました。

この新星はASAS-SNの観測データでは3月6.362日にはまだ15.5等よりも暗かったものの、西山さんと椛島さんの観測によると発見前日の9.813日にはすでに10.9等に増光していたことが分かりました。発見後の観測によると、この新星は3月12日の時点で発見時とほぼ同じ9.5等前後の明るさで観測されており、今後の明るさの変化が注目されます。

2018年3月13日

参考文献

新星の画像

新星のスペクトル

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