はえ座とコンパス座はどちらも赤緯-55度よりも南にあり、日本の多くの地域からは見ることができませんが、これらの星座の中に相次いで明るい新星が発見されました。
オーストラリアのRob Kaufmanさんは1月14.486日(世界時; 以下同様)に焦点距離55mmのレンズとデジタルカメラで撮影した画像からはえ座に7等級の明るい新天体を発見しました。この天体は、発見者自身によって透過型回折格子を装着した焦点距離200mmのレンズとデジタルカメラを用いて分光が行なわれ、水素のバルマー系列と1階電離した鉄の輝線がみられることが分かり、古典新星であることが判明しました。この新星の正確な位置は
赤経:11時 26分 14.95秒 赤緯:-65度 31分 24.1秒 (2000.0年分点)
です。
ASAS-SNのアーカイブデータによると、この新星は1月3日に8.8等に増光した後、11等ほどまで減光していたことが記録されており、新星爆発が起こったのは発見の10日以上前であると考えられます。また、1月11日にはこの新星の方向に新たなガンマ線を放つ天体がFermi宇宙望遠鏡によって発見されました。可視光での増光とガンマ線を放つ新天体が出現したタイミングから、この新星がガンマ線でも明るくなったと考えられます。
AAVSOなどに報告された観測データによると、この新星は1月16日ごろには6.5等ほどまで明るくなった後、ゆっくりと減光しており、25日には7.5等ほどで観測されました。
オーストラリアのJohn Seachさんは1月19.708日に焦点距離50mmのレンズとデジタルカメラで撮影した画像から、コンパス座に9等の新天体を発見しました。この天体の正確な位置は
赤経:13時 53分 27.60秒 赤緯:-67度 25分 00.7秒 (2000.0年分点)
です。
千葉県の清田さんは1月20.5916日にオーストラリアにある望遠鏡を使ってこの天体のスペクトルを撮影し、この天体が強いHα輝線を示すことを報告しました。また、21.36日にチリにあるSOAR 4.1m望遠鏡をで行なわれた分光観測でも、この天体のスペクトルにP Cygプロファイルを持つ水素のバルマー系列や1階電離した鉄の輝線がみられることが分かり、これらの観測からこの天体が古典新星であると確認されました。
AAVSOなどに報告された観測データによると、この新星は発見後も増光を続けており、1月23-25日ごろには7等台まで明るくなったことが観測されました。
2018年1月26日
参考文献
- CBET 4473: NOVA MUSCAE 2018
- Li, K. L., et al. (2018), ATel #11212
- CBAT "Transient Object Followup Reports": PNV J13532700-6725110
- Strader, J., et al. (2018) ATel #11209