板垣さんがいて座に新星を発見

著者 :前原裕之(国立天文台)

夕方暗くなったころ、晴れていれば南西の空にはひときわ明るく輝く金星が見え、金星から東側に少し離れたところには赤く輝く火星が見えています。金星と火星の中間あたりのいて座の中に新たな新星が発見されました。新星を発見したのは山形県の板垣公一(いたがきこういち)さんです。

板垣さんは10月20.383日(世界時、以下同様)に、焦点距離180mmのレンズとCCDカメラでいて座付近を撮影した画像から10.7等の新天体を発見しました。板垣さんの観測によると、この天体の位置は

赤経:18時10分28.29秒
赤緯:-27度29分59.0秒            (2000.0年分点)

です。この天体は千葉県の清田さんによって確認観測が行なわれた他、群馬県の小嶋さんが20.391日に撮影した捜索画像にも10.5等で写っていたことが報告されました。

この天体の分光観測は西オーストラリア大学のPaul Luckasさんによって発見直後の20.4日に行なわれました。この天体のスペクトルにはP Cygniプロファイルを示す水素のバルマー系列および1階電離した鉄の輝線が見られることから、この天体が古典新星であることが分かりました。

23日の板垣さん、福岡県の高尾さん、新潟県の佐藤さんなどの観測によると、この新星は発見された20日よりも明るい8等まで増光したことが分かりました。西の空低く観測条件はあまり良くありませんが、今後の明るさの変化が注目されます。

参考文献

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