さそり座に11等級の新星が出現

著者 :前原裕之(国立天文台)

夕方暗くなると晴れていれば南西の空に火星と土星、アンタレスの3つの明るい星を見ることができると思います。アンタレスの属するさそり座は私達の天の川銀河の中心方向の近くに見える星座のため、これまでに多数の新星が発見されています。そのさそり座の中に新たな新星が発見されました。新星を発見したのはチリにある4台の口径14cmの望遠鏡とCCDカメラで超新星のサーベイを行なっているAll-Sky Automated Survey for Supernovae (ASAS-SN, "Assassin")のグループと、香川県観音寺市の藤川繁久(ふじかわしげひさ)さんです。藤川さんは9月6.481日(世界時、以下同様)に撮影した画像から11.6等の新天体を、またASAS-SNのグループは9月7.00日に撮影した画像から11.4等の新天体をそれぞれ独立に発見しました。ASAS-SNによって9月6日に撮影された画像にはこの天体は12.1等で既に写っていましたが、その前日の5日に藤川さんが撮影した画像には12.9等よりも明るい天体は写っていなかったことが報告されており、この天体は9月5日と6日の間に明るくなったものと考えられます。ASAS-SNの観測によると、この天体の位置は

赤経:17時22分51.43秒
赤緯:-31度58分36.3秒   (2000.0年分点)

です。

この天体の分光観測はオーストラリアのT. Bohlsenさんや、チリのラスカンパナス天文台の2.5mデュポン望遠鏡、兵庫県立大学西はりま天文台の2mなゆた望遠鏡によってそれぞれ行なわれ、この天体のスペクトルには水素のバルマー系列の他、1階電離した鉄やカルシウム、中性の酸素などの輝線がみられることが分かりました。また水素のバルマー系列や鉄、酸素の輝線はP Cygniプロファイルを示し、秒速800-900kmほど青方偏移した吸収構造がみられることも分かりました。これらのスペクトルの特徴から、この天体は古典新星であることが確認されました。

2016年9月10日

参考文献

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