西村さんがさそり座に新星を発見

著者:前原裕之(国立天文台)

6月に入り梅雨入りした地域では曇りや雨の日が多くなってしまいましたが、晴れていれば夜暗くなった頃に南の空にひときわ赤く明るく輝く接近中の火星や土星、さそり座の1等星アンタレスを見ることができるはずです。そんなさそり座の中にこのほど新星が発見されました。発見したのはこれまでにも多くの新星を発見されている静岡県掛川市の西村栄男(にしむらひでお)さんです。

西村さんは6月10.629日(世界時、以下同様)にさそり座の尾部付近を焦点距離200mmのレンズとデジタルカメラで撮影した画像から12.4等の新天体を発見しました。この天体は西村さんが6月5.532日に撮影した画像には写っていませんでした。発見の報告を受けて、11日には山形県の板垣さんや千葉県の野口さん、清田さん、北海道名寄市のなよろ市立天文台によって確認観測が行なわれ、Vバンドでは発見時とほぼ同じ明るさの12等台であること、色が赤いことなどが分かりました。また、西村さんの発見の1日前、6月9.596日に群馬県の小嶋さんが撮影した画像には、すでにこの天体が11.8等で写っていたことが分かりました。板垣さんの観測によると、この天体の位置は

赤経: 17時 38分 19.22秒
赤緯:-37度 25分 07.8秒   (2000.0年分点)

です。

6月11.65日には岡山県井原市の美星天文台の1.01m望遠鏡によってこの天体の分光観測が行なわれ、この天体が強く幅の広いHα輝線を示す天体であること、スペクトルには同様に幅の広いHβ輝線もみられることが分かりました。これらのスペクトルの特徴から、この天体は爆発して間もない古典新星であることが判明しました。

この天体はさそり座λ星の西およそ1度、明るい散開星団M7の南東およそ4度の位置にあります。6月6, 7, 8日にこの付近を撮影した画像をお持ちの方は、新星が写っていないかどうか確認してみて下さい。

2016年6月12日

参考文献

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