藤川さん、西村さん、山本さんがいて座に新星を発見

著者 :前原裕之(国立天文台)

いて座は私たちの銀河系の中心の方向のため数多くの星があり、その分新星も数多く出現する方向です。今年だけでもこれまでにいて座の中には3個の新星が発見されていましたが、10月31日にまた新たな新星がいて座の中に発見されました。新星を発見したのは香川県観音寺市の藤川繁久(ふじかわしげひさ)さんで、静岡県掛川市の西村栄男(にしむらひでお)さんと愛知県岡崎市の山本稔(やまもとみのる)さんも同じ新星を独立に発見しました。

藤川さんは10月31.386日(世界時、以下同様)に焦点距離120mmのレンズとCCDカメラを用いて撮影した画像から11.8等の新天体を発見しました。また、西村さんは焦点距離200mmのレンズとデジタルカメラで31.376日に、山本さんは焦点距離135mmのレンズとデジタルカメラで31.392日に撮影した画像から、それぞれ同じ天体を独立に発見しました。この天体は西村さんが10月28日に撮影した画像には12.7等以下で写っておらず、発見前の数日間の間に明るくなってきたと考えられます。発見報告を受けて、イタリアのG. Masiさんや千葉県の清田さん、野口さんらによって確認観測が行なわれました。Masiさんの観測によると、この天体の位置は

赤経  18時22分59.29秒
赤緯 -19度14分12.8秒  (2000年分点)

です。また、清田さんの多色測光観測からはこの天体が赤い色をしていることが分かりました。

岡山県の藤井さんは11月2.417日と3.389日に、またイアリアのパドヴァ天文台のグループは2.758日と3.718日にそれぞれこの天体の分光観測を行ないました。この天体のスペクトルには幅の広い水素のバルマー系列の輝線の他、中性ヘリウムと一階電離した窒素の輝線がみられること、それぞれの輝線の広がりは速度に換算すると秒速4000-5000kmにもなることが分かりました。これらの特徴からこの天体が古典新星であることが判明しました。輝線の幅が広いことは、新星爆発によって速い速度で周囲に物質が放出されていることを示しています。このような速い膨張速度を示す新星は一般に速く暗くなってしまうことが知られており、今後の明るさやスペクトルの変化が注目されます。

参考文献

新星の画像

新星のスペクトル

2015年11月4日

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