板垣さんがわし座に新星を発見

著者 :前原裕之(国立天文台)

山形県の板垣公一さんはこれまでにも100個を越える数の超新星のほか、新星や彗星を発見しています。板垣さんは9月27日にもいて座の中に新星を発見したばかりですが、このほど別な新星をわし座の中に発見しました。

板垣さんは10月5.548日(世界時、以下同様)に口径21cmの反射望遠鏡とCCDカメラを用いて撮影した画像から12.4等の新天体を発見しました。この天体は板垣さんによる発見の4日前、ハワイとチリでそれぞれ4台の口径14cmの望遠鏡とCCDカメラを使って超新星のサーベイを行なっているAll-Sky Automated Survey for Supernovae (ASAS-SN or "Assassin")によって10月1.29日にV等級で15.2等の新天体(ASASSN-15qd)として発見された天体と同一のもので、ASAS-SNの9月29日に撮影された画像にも14.7等で写っていたことが分かりました。板垣さんが発見直後に口径50cmの望遠鏡で行なった観測によると、この天体の位置は

赤経:19時21分50.12秒
赤緯:+15度09分24.8秒    (2000.0年分点)

です。この天体は板垣さんとASAS-SNによる発見よりも前の9月27日に群馬県の小嶋さんが撮影した画像に既に写っていたことが分かりました。また、筆者の行なっている広視野サーベイのデータでも9月21日には写っていなかったものの、9月29日にはIc等級で10.2等で写っていたことが分かりました。肉眼で見た時の星の明るさに近い波長550nm付近のV等級と比べて、波長の長い800nm付近のIc等級ではこの天体は明るいことから、この天体の色が極めて赤いことが分かりました。この他、愛知県の広沢さんや千葉県の野口さんからもこの天体の観測が報告されました。

この天体の分光観測は岡山県の藤井貢さんによって行なわれ、強いHα輝線の他、一階電離した鉄やカルシウム、中性酸素などの輝線を示すことが分かり、これらの特徴からこの天体が古典新星であることが判明しました。分光や多色測光の結果から、この新星は強い星間吸収を受けていると考えられます。

参考文献

新星の画像

新星のスペクトル

2015年10月8日

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