梅雨が明けたにもかかわらず、ぐずついた天気が続きなかなか星空を眺めることができない日々が続いており、そんな日々が過ぎていくうちに夜も遅くなると秋の星座が顔を出してくる時期となりつつあります。秋の星座というとあまり明るい星が目立たないことから神話物語ばかりがクローズアップされる傾向にありますが、一方で明るく有名な変光星の宝庫でもあります。ミラやアルゴル、ケフェウス座δ、カシオペア座γ、などなど変光星に興味のある天文ファンにはもっとも親しみ深い季節といえるかもしれません。
そんな秋の星座の中に日本人捜索家の手によって新たな矮新星が発見されました。発見したのは、鹿児島県の向井優(むかいまさる)さんです。向井さんは、7月19.738日(世界時)に105mmのレンズで撮影された画像から、うお座とくじら座の境界付近に12.3等級の新天体を発見しました。この新天体は6月13日に撮影された画像では13等より暗かったことがわかっています。また、イタリアのG.Masiさんもほぼ同時期の7月19.9945日に、12.5等の新天体としてこの天体を報告しています。正確な位置は以下のとおりです。
赤緯 23時05分23.14秒 赤経 -02度25分45.5秒 (2000.0年分点)
この位置は、USNOカタログにある18.7等の星と一致することから、振幅の大きい矮新星の可能性が疑われました。このようなアウトバースト振幅の大きな矮新星はおおぐま座SU型矮新星や、その中のサブグループのや座WZ型変光星である可能性が高く、周期変動がアウトバースト中に観測されることが期待されます。その後、G. Masiさんや日本の大阪教育大学チームの方々によって連続測光観測が行われた結果、振幅0.05等、周期0.05458日の周期変動が検出されました。この変動はや座WZ型矮新星に特有の早期スーパーハンプであると考えられます。
この天体の早期スーパーハンプはそれから数日間観測されましたが、その後通常のスーパーハンプが見られ始めるようになりました。それからは、ゆっくりと暗くなりつつあります。