ゴールデンウィークも終わり、日差しが次第に強まりつつある昨今ですが、日本人の新天体捜索家の人々の手によってまた新たな矮新星が発見されました。
発見したのは、これまでにも多くの新天体を発見していることで知られる静岡県掛川市の西村栄男さん、群馬県嬬恋村の小嶋正、および茨城県水戸市の桜井幸夫さん、の方々です。このような各地の捜索者の方が発見者として並ぶのは、これらがいずれも独立発見だったことによります。
まず西村さんは今年4月11.747日(世界時)に、200mm望遠レンズを取り付けて撮像した画像からへびつかい座に10.7等級(ノンフィルター)の新天体を発見しました。この天体は、10.699日の時点で撮られた画像には写っていなかったとのことです。また、これとは独立に小嶋さんが4月11.757日にこの天体を発見し、10.749日の時点では85mmの望遠レンズを用いて撮像した画像には写っていなかったことを報告しました。さらに、桜井さんが180mmの望遠レンズを用いて11.780日に10.6等の新天体としてこの天体を報告しました。こちらも10.792日に撮った画像ではこの天体は写っていなかったとのことです。以上のような流れで、この天体を3人が独立の捜索で発見したということになります。これを受けて、サーベイ観測を行っている東京大学木曽観測所の前原裕之さんはこの天体が4月10.761日の時点では13.1等(V等級)より暗く、11.759日には10.9等(V等級)まで明るくなっていたと報告しました。正確な位置は以下のとおりです。
赤緯 17時14分42.55秒 赤経 -29度43分48.1秒 (2000.0年分点)
その後、この発見位置の近くに紫外線衛星GALEXによって報告されている紫外線の強いソースが見つかっていることが指摘されました。このような天体は矮新星の可能性が示唆されます。さらに岡山県の藤井貢さんがこの天体の分光観測を行ったところ、同じくこの天体が矮新星である可能性が強いという結果が得られました。
これを受けて、連続測光観測が行われ、早期スーパーハンプと思われる周期0.05958日の変動が検出されました。さらに4月27日には早期スーパハンプから通常のスーパーハンプが成長し始めるところが観測されました。
その後、この天体は少しづつ減光しつつありますが、極大光度が10.7等というのは矮新星としてはかなり明るい部類といえます。このように明るい矮新星がこれまで未発見だったのは、この天体のアウトバーストの頻度が非常に低いためだろうと考えられます。早期スーパーハンプが2週間以上にわたって続いたこともこれを裏付けています。このような天体は連星の真価の観点から非常に興味をもたれており、今後の研究が待たれます。
今回の発見は興味深い矮新星の発見ということもさることながら、3人の日本人の手による独立発見という点も注目されます。日本における新天体捜索の活発さを裏付けるエピソードといえるのではないでしょうか。
参考文献
- vsnet-alert 17207,17208,17211,17217, 17231,17250,17264,17271
- http://www.cbat.eps.harvard.edu/unconf/followups/J17144255-2943481.html