今年は異例に大雪の多い冬でしたが、ようやく寒さもやわらいで気温が高い季節になってきました。真冬ほどは澄んでいない夕方の空には、まだ冬の星座をみることが出来ます。
そんな冬の代表的な星座の一つであるオリオン座に新たな矮新星が発見されました。天体を発見されたのは、掛川市の西村栄男さんです。新星をはじめとする新天体の捜索者として知られる西村さんは、今年3月5.475日にデジタルカメラと200ミリの望遠レンズで撮影した画像に13.5等の新天体を発見しました。この天体は2月11日にパトロールした写真には写っておらず、新星かあるいはその他の種類の新天体ではないかと考えられました。
ロシアとスロバキアの天文学者からなる自動望遠鏡サーベイを行っているMASTERチームは、2日前に撮影した画像にはこの位置に明るい天体は写っておらず、またこの新天体がUSNOカタログにある20等星(R等級)と一致することを示しました。もしこの天体が今回の新天体の静穏時の姿だとしたら、増光幅は6.5等程度となり、新星ではなく矮新星であろうと考えられました。正確な位置は以下のとおりです。
赤経 06時00分09.9秒 赤緯 +14度26分15秒 (2000.0年分点)
矮新星の場合、スーパーハンプをはじめとする短周期変動がみられることが期待されます。発見後、スイスの笠井潔さんをはじめとするCCD観測者によって測光観測による時間変動の追跡が行われました。その結果、周期93分のスーパーハンプが観測され、この天体が矮新星のうちでもおおぐま座SU型矮新星であることが判明しました。
興味深いことは、アウトバースト中におけるこの天体のスーパーハンプの周期変化の仕方についてです。スーパーハンプはおおぐま座SU型矮新星のスーパーアウトバーストの最中に広くみられる現象ですが、スーパーアウトバーストの進行とともに周期や振幅が変化することが知られ、矮新星を作る円盤の形状や半径の変化を反映しているものと考えられています。例えばスーパーアウト初期にはそれよりあとに比べるとやや長い周期を示し、かつ振幅もしだいに増大していく「stage A スーパーハンプ」が見られ、これはスーパーハンプがまだ成長している段階を反映するものだとされます。
このstage Aスーパーハンプは通常のおおぐま座SU型矮新星では1~2日しか見られませんが、この新しい矮新星では10日以上にわたって見られました。このような現象は、新しく発見されたこの矮新星が非常に軽い伴星を持つ系であることを示唆してしています。特にここまで長く続く場合、伴星がすでに通常の核融合を起こすことができなくなった褐色矮星である可能性が充分考えられます。もしそうだとしたら、このような天体は、矮新星のような近接連星の進化を論ずる上で大きな鍵となる天体となります。
矮新星の進化的な段階をスーパーハンプの観測からとらえるという研究は、日本の観測家や理論家が中心となってすすめられ、ここ数年で急速に発展してきつつあるものです。今回の発見されたこの矮新星もまた、その発展に手がかりを投げかける新しい発見となることでしょう。
参考文献
- CBAT "Transient Object Followup Reports"
- vsnet-alert 16974, 16976, 17011, 17067
2014年3月25日