3月になり少しずつ春が近づいているのを感じるようになってきました。明け方にはもう夏の星座が東の空に見えるようになっています。はくちょう座の北東にあり、夏から秋にかけて見やすい星座のケフェウス座の中に新星が発見されました。新星を発見したのは、福岡県久留米市の西山浩一(にしやまこういち)さんと佐賀県みやき町の椛島冨士夫(かばしまふじお)さんのチームで、昨年2月にも同じくケフェウス座の中に新星を発見しています。
西山さんと椛島さんは3月8.792日(世界時)に、焦点距離105mmのレンズとCCDカメラを用いて撮影した画像から、11.7等の新天体を発見しました。さらに発見の直後に口径40cmの望遠鏡でこの天体の確認観測を行ないました。この天体の位置は
赤経: 20時54分23.86秒 赤緯:+60°17分07.7秒 (2000.0年分点)
で、はくちょう座とケフェウス座の境界付近になります。この位置には西山さんと椛島さんが3月3日に撮影した画像には13.9等よりも明るい天体は写っていませんでしたが、発見の前日の7日に撮影した画像にはこの天体が12.9等で写っていることが分かりました。また、発見後に千葉県の清田さんやフィンランドのOksanenさん、ドイツのSchmeerさんらによって行なわれた確認観測によると、3月9日ごろに11.5等ほどで最も明るくなった後、暗くなり始めたことが分かりました。
イタリアのパドヴァ天文台のグループや岡山県の藤井さんは、3月9-10日にこの天体の分光観測を行ないました。観測の結果、この天体のスペクトルには水素のバルマー系列の輝線の他、一階電離した鉄の輝線等がみられることが分かりました。また、水素などの輝線は輝線の青側が吸収線になっているP Cygプロファイルと呼ばれる特徴を示し、この天体のスペクトルでは輝線のピーク波長から秒速900kmほど青方偏移した波長に吸収線の構造がみられることも分かりました。これらの特徴から、この天体が古典新星で、観測時点でちょうど爆発後最も明るい時期にあたることが判明しました。
この新星は新星爆発による物質の膨張速度が遅いことから、比較的ゆっくりと暗くなるタイプの新星であると考えられます。しかし、同様の「遅い新星」だったケフェウス座新星2013( = V809 Cep)のようにダスト形成による減光を示すものもあり、今後の明るさやスペクトルの変化などが注目されます。
参考文献
2014年3月11日