古山さんがいて座に新星を発見

前原裕之(東京大学木曽観測所)

いて座は私達の銀河系の中心方向にあたり、これまでに多数の新星が発見され ています。しかし、いて座の方向は12月から1月にかけて太陽に近く観測が難し いため、この時期に増光した新星は暗くなってから発見されたり、場合によって は見逃されてしまうこともあると考えられます。いて座は1月の終わりごろには 明け方の南東の空低くに見えるようになってますが、そんな明け方に見ええるよ うになったばかりのいて座に新星が発見されました。新星を発見したのは茨城県 の古山茂(ふるやましげる)さんです。 古山さんは焦点距離200mmのレンズとCCDカメラを用いて1月26.857日(世界時)に 撮影した画像から、8.7等の新天体を発見しました。新天体の位置は
赤経:18時25分08.60秒
赤緯:-22度36分02.4秒   (2000.0年分点)
です。この天体は27.847日には千葉県の野口さん、28.876日には千葉県の清田さ ん、2月2.862日には埼玉県の門田さんによってそれぞれ確認観測が行なわれまし た。 この天体の分光観測は兵庫県立大学西はりま天文台の2mなゆた望遠鏡によって 1月30日に行なわれ、この天体のスペクトルには水素のHα、Hβ輝線の他、ナト リウムD線や一階電離した鉄、酸素の禁制線、中性酸素、一階電離したカルシウ ムの輝線がみられることが分かりました。また、Hα輝線や中性酸素の輝線には 青側が吸収線となる"P Cygプロファイル"がみられ、これらの特徴から発見され た天体が極大を過ぎた古典新星であることが分かりました。 vsolj-obsメーリングリストに報告された清田さんと広沢さんの観測によると、 この天体は1月28日には10.2等ほどでしたが、31日には11等、2月4日には11.6等 まで減光しました。分光観測によるとHαと中性酸素の輝線成分は青側と赤側に 2つのピークを示す構造をしていることが報告されており、今後明るさやスペク トルがどのような変化を示すのかが楽しみな天体と言えます。

参考文献

2014年2月10日

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