板垣さんがへび座に新星を発見

著者 :前原裕之(東京大学木曽観測所)

日が暮れるのがだいぶ早くなり冬の季節が近づいてきましたが、星空に目を向けると、夕方の早い時間にはまだ夏の星座を西の空に見ることができます。へびつかい座で頭部と尾部に分断されているへび座は、今の時期には頭の部分は明け方の東の空に、夏の天の川にかかっている尾の部分は夕方西の空に見えます。そのへび座の尾の近くの天の川に、新星が発見されました。発見したのは先月わし座に新星を発見したばかりの板垣公一さんです。

山形県の板垣公一(いたがきこういち)さんは、11月23.384日(世界時)に、口径21cmの望遠鏡をCCDカメラを用いて撮影した画像から12.3等の新天体を発見しました。さらに21cmの望遠鏡での発見後に、口径50cmの望遠鏡を用いてこの天体を確認しました。11月6日に板垣さんが撮影した画像には、この天体の位置には15等よりも明るい天体は写っていませんでした。板垣さんの観測によるこの天体の位置は

赤経:18時 09分 03.46秒
赤緯:-11度 12分 34.5秒    (2000.0年分点)

です。

この天体は群馬県の小嶋正さんが、11月22日と23日に150mmレンズとデジタルカメラを用いて撮影した画像には13等以下で写っていませんでしたが、26日に撮影した画像には12.7等で写っていたことが報告されました。また、板垣さんが26日に撮影した画像では、11.7等と、発見時よりも明るくなっていることが分かり、23日の発見時点ではまだ増光中だったと考えられます。

この天体は、広島大学のグループとイタリア パドヴァ天文台のグループによってそれぞれ分光観測が行なわれ、水素のバルマー系列の輝線の他、中性酸素等の輝線がみられることや、中性酸素の輝線にP Cyg型プロファイルと呼ばれる短波長側が吸収線になっている特徴がみられることが分かり、この天体が古典新星であることが判明しました。また、岡山県の藤井貢さんもこの天体の分光観測に成功し、強いHα輝線と中性酸素の輝線がみられることを報告しました。

分光観測から求められた、新星爆発によって膨張するガスの速度は秒速1000km程度と、それほど速くはないことから、ゆっくりと暗くなるタイプの新星であると考えられます。

なお、この新星には「へび座V556」という変光星としての名前がつけられました。

参考文献

2013年11月29日

※ この「VSOLJニュース」の再転載は自由です。一般掲示、WWWでの公開等にも自由にお使いください。資料として出版物等に引用される場合には出典を明示していただけますと幸いです。継続的・迅速な購読をご希望の方は、VSOLJニュースのメーリングリスト vsolj-news にご加入いただくと便利です。購読・参加お申し込みは ml-command@cetus-net.org に、本文が subscribe vsolj-news と書かれたメールを送信し、返送される指示に従ってください。なお、本文内容に対するお問い合わせは、著者の連絡先までお願い致します。