今年はずいぶんと長い残暑が続いた年でしたが、さすがに最近は急に涼しくなって、残暑に関わらずやってくる秋の空にもふさわしい秋らしい天気が続くようになりました。秋の空に輝く星々といえば、ペガススの四辺形やカシオペアのW型といった印象深い並びをもつ星々や、くじら座のミラ・ペルセウス座のアルゴルをはじめとした有名な星たちが思い浮かびます。そんななか、みずがめ座は黄道十二星座として名前は有名ながら、夏の星座と秋の星座の中間にあることや大きいにも関わらずあまり明るい星がないことなどもあって実際の星座としてはいまいち馴染みの薄い星座かもしれません。
このたび、このみずがめ座に日本人の新天体捜索家の手によって新しい矮新星が発見されました。発見したのは新星や超新星、そして矮新星の多くの発見で知られる、山形県の板垣公一さんです。新天体の捜索中、2013年9月28.6383日(世界時)にみずがめ座の中に13.6等(CCDノンフィルター)の新天体を発見しました。
この報告を受けて、千葉県の清田誠一郎さん、オーストラリアのCamilleriさんなどによって確認観測がなされ、この発見が間違いないことが確かめられました。また、近傍小惑星の探索のサーベイをメインとしているカタリナ・スカイ・サーベイも9月29日に同位置に13.5等の非常に明るい天体を検出したことが報告されており、この新しく発見された矮新星と同一天体であることが確認されました。正確な位置は以下のとおりです。
赤緯 23時38分22.54秒 赤経 -20度49分51.8秒 (2000.0年分点)
この新天体は、爆発前の画像の21.6等星と一致することが確認され、増光範囲から増光のまれな矮新星、や座WZ型矮新星の一つではないかと考えられました。や座WZ型矮新星の場合、早期スーパーハンプと呼ばれる周期1~2時間の変動が増光直後に観測されるのが一般的ですが、発見報告がなされた翌日の9月29日に南アフリカのMonard氏によって連続測光観測が行われた結果振幅0.08等、周期83分の早期スーパーハンプがとらえられ、この天体がや座WZ型矮新星であることが確認されました。
その後早期スーパーハンプが約10日にわたって観測されたのち、この天体は通常のスーパーハンプ(早期スーパーハンプに比べると数%長い周期を持つ)を示すようになりました。光度もじわじわと減光し、現在では15等なかばになっています。や座WZ型矮新星は早期スーパーハンプを示す他にも一度暗くなってからの再増光を示すなどさまざまな興味深い現象を示すことがしられており、今後も動向が注目されます。
参考文献
2013年10月18日