増光のまれな矮新星、うしかい座UZのスーパーアウトバースト

著者:大島誠人(京大理)

 しばしば当欄でもアウトバーストが報じられるや座WZ型矮新星ですが、その多くは新発見のものが占めています。これはや座WZ型矮新星のアウトバースト頻度が非常に低いために、これまでアウトバーストどころか、存在自体をちゃんととらえられていなかったものが多いためです。このような増光頻度の少なさもあって、や座WZ型矮新星で複数回のアウトバーストが観測されているものは数えるほどしかありません。また、複数回のアウトバーストが知られていても、その多くが部分的な観測しかないなどのため十分なデータが得られておらず、全貌が明らかでない、ということもしばしばあります。

 うしかい座UZはや座WZ型矮新星の候補天体の中でももっとも歴史が長い天体のひとつで、1940年代にはすでに存在が知られていました。もっとも当時は正体がわかっておらず、矮新星ではないかと言われるようになったのは1970年代になってからです。静穏時の光度がかなり暗いため静穏時の観測が困難なことに加え、アウトバーストの頻度がまれで、特に矮新星だろうといわれてからしばらくの間アウトバーストがとらえられない時期が続いたこともあって、矮新星をモニターする観測者から「幻の矮新星」「死ぬまでに一度は見たい矮新星」などと言われることもありました。その後、1994年7月と2003年12月にようやくスーパーアウトバーストがとらえられ、SU UMa型矮新星であることが確認されました。また、スーパーアウトバーストが終わった後で複数回の再増光をしめしたことなどから、や座WZ型矮新星であろうと考えられました。

 この天体は矮新星の中では極大光度が明るい部類の天体で、スーパーアウトバースト時には11~12等程度まで明るくなります。しかし、1994年当時はまだSUUMa型矮新星についての研究が充分進んでいなかったこと、2003年のスーパーアウトバーストは12月という非常に観測しづらい時期に起きたこと、などから、有名で比較的明るい天体であるにもかかわらず充分なデータが得られていませんでした。また、1994年のひとつ前のアウトバーストは1978年にさかのぼるため、おそらく国内ではこのアウトバーストをとらえた観測者はいないものと思われます。

 前回の増光から10年、ついに次のスーパーアウトバーストを起こしました。発見したのは、アメリカのC. Chiselbrook氏です。2013年7月26.08194日(世界時)、うしかい座UZが12.8等(眼視等級)まで増光しているのを発見しました。これを受けたカナダのW. MacDonald II氏がCCD観測を行ったところ、12.69等(V等級)まで明るくなっていることが確認されました。その後この天体は少し増光を続け、12.0等前後まで明るくなり、その後は穏やかに減光を続けています。正確な位置は以下のとおりです。

赤経 14時44分01.2秒 (2000.0年分点)
赤緯 +22度00分54秒 (2000.0年分点)

 その後の連続測光観測によって早期スーパーハンプと思われる変動が受かり、この天体がや座WZ型矮新星に属することが確実となりました。今後、数日のうちに通常のスーパーハンプが発展すると考えられます。近年の研究により通常のスーパーハンプと早期スーパーハンプの値を用いて矮新星の連星としてのパラメータを調べることができるようになったことから、今後の観測によりこの天体の素性が明らかにされていくことでしょう。

参考文献

vsolj-alert 16053, 16065

2013年7月31日

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