板垣公一さん、わし座に新たな明るい矮新星を発見

著者:大島誠人(京大理)

 わし座といえば七夕物語の題材であるアルタイルを含む夏の代表的な星座の一つです。6月ともなると、夜遅くになれば東南の空にかかっているところを見ることが出来ます。天の川に近い場所でもあり、さまざまな興味深い天体の宝庫でもあります。SS433やAS338、わし座V605といった特殊星や、反復新星わし座CIといった名前が頭に浮かぶ方もおられるでしょう。

 そのわし座に、このたび日本人捜索家によって、新たに明るい矮新星が発見されました。天体を発見されたのは、超新星の捜索家としても名高い山形県の板垣公一さんです。2013年5月31.5974日に21cm反射望遠鏡での捜索中、10.8等級(CCDノンフィルター)の新天体をわし座に発見しました。この星像があった位置には5月21.608日の時点では15.5等より明るい天体はありませんでした。正確な位置は以下のとおりです。

赤経 19時15分01.99秒
赤緯 +07度19分47.1秒

 その後なされた確認観測などから、新星にしては色が青すぎること、および比較的大きな固有運動がみられることが判明し、矮新星ではないかという可能性がもたれました。これをうけたスペインのEnrique de Miguel氏の観測で、周期が0.0554日程度のふたやま状の変動が報告されたことから、この新天体は増光がまれな矮新星、や座WZ型矮新星の天体であり、報告された変動はその「早期スーパーハンプ」を見ているのではないかという可能性が示唆されました。その後も世界各地で測光観測がなされ、この示唆が正しいことが判明しました。

 天体はその後も少しづつ減光しているものの増光状態が続いており、早期スーパーハンプはその後、6月8日に消失し代わりに(通常の)スーパーハンプが出現しました。この後もしばらく緩やかな減光が続き、1~2週間後には急減光が起こると考えられます。や座WZ型矮新星は減光後の再増光がしばしば見られる天体であるため、減光後の再増光の有無も興味深い点として注目されます。

参考文献

2013年6月13日

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