へび座QZ、再増光を伴うスーパーアウトバーストを起こすことが判明

著者:大島誠人(京大理)

 矮新星は、新星や超新星と比べて大きなニュースになることが少ない天体ではありますが、まだまだ謎に包まれており捜索家の方の手による新たな天体の発見、あるいは既知の天体の増光の発見が研究の進歩に重要な手がかりとなります。

 へび座QZは、1998年12月に愛知県の長谷田勝美さんが捜索フィルムの中に増光しているところが写っているのを発見され、新変光星HadV04(長谷田氏の発見した4番目の変光星という意味)として報告された天体です。おそらく矮新星だろうと考えられましたが、その後静穏時の対応天体がどの星であるかよく分かっていない時期が続きました。2001年に分光観測が行われ、どの天体が増光中の星に対応する天体かが判明するとともに、この天体が軌道周期120分の矮新星であることが判明しました。また、一般的に矮新星は軌道周期から伴星のスペクトル型がある程度推測できるという特徴がありますが、この系は軌道周期から推測されるよりはるかに高温の伴星を持っていることも判明しました。

 軌道周期が120分ということから、この系は矮新星の中の「おおぐま座SU型矮新星」に属することが予想されました。このタイプの矮新星は通常のアウトバーストの他にスーパーアウトバーストと呼ばれる明るく長い増光を示すことがしられており、極大が12等台と矮新星としては明るいということもあって多くのモニター観測がなされてきました。しかし、いくつかのノーマルアウトバーストが観測されたもののスーパーアウトバーストは観測されることがありませんでした。

 最初の発見から15年が経過した2013年3月11.028日、長らく待たれたスーパーアウトバーストをしているところがついに観測されました。発見は、ロシアで行われているサーベイ観測プロジェクトであるMASTERによってなされ、報告された光度は11.64等(CCDノーフィルター)でした。その後の観測によりスーパーハンプもとらえられ、この系がSU UMa型矮新星であることが改めて確かめられました。

 スーパーアウトバーストはその後20日に渡って続いたあと一旦減光しましたが、興味深いことにその後2回の再増光が観測されました。このような複数回の再増光は軌道周期が非常に短い系では珍しくありませんが、QZ Serのように比較的長い軌道周期の系では普通見られない現象です。このような現象が見られる理由はまだ明らかになっていませんが、この系の伴星は軌道周期から推測される値にくらべて低い質量を持つことも明らかにされており、特異な伴星を持っていることがこの様な異例の現象と関係があるのかもしれません。

 このような伴星を持つ系は矮新星が作られる過程の違いに関係があるのではないかと言われており、今回のへび座QZのスーパーアウトバーストとそれに続く再増光は矮新星の生成・進化の過程について知る上での重要な鍵となることでしょう。

参考文献

2013年5月12日

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