金子静夫さん、ぎょしゃ座に新しい矮新星を発見

著者:大島誠人(京大理)

 矮新星は、名前こそ新星に似ていますが現象としてはやや異なったものです。どちらも白色矮星を含んだ近接連星系で起こるという点は共通していますが、新星爆発は白色矮星表面に降り積もった物質が核暴走を示すことで起こる現象なことに対し、矮新星増光は白色矮星のまわりに形成された円盤の物質が内側へと落ち込むことによって起こる現象です。矮新星は現在数百個ほど知られていますが、その増光を示す頻度はまちまちで中には非常にまれにしか増光を示さない系もあり、そのためまだまだ新発見される矮新星もあります。

 このたび、日本の捜索家の方によって、新たな矮新星が発見されました。発見したのは静岡県の金子静夫さんで、2013年4月3.445日にデジタルカメラを用いた捜索中、ぎょしゃ座に12.0等(U等級)の新天体を発見しました。その後、フィンランドのA. Oksanen氏により観測観測がなされ、11.8等(V等級)で観測されました。シュテルンベルク天文研究所のD. Denisenko氏によれば、同年3月31.752日に撮られた画像ではまだ増光していなかったとのことです。正確な位置は、以下の通りです。

赤経 06時27分03.75秒
赤緯 +39度52分50.4秒 (2000.0年分点)

 この天体は、静穏時の天体が20等級の青い天体に同定されると思われることから増光幅(8等)から振幅が大きい矮新星である可能性が疑われました。A.Oksanen氏のその後の測光観測により、周期85分、振幅0.05等のふたやま状の周期変動が観測されました。このことから、この天体が矮新星の中でも特に軌道周期が短く増光頻度のまれなや座WZ型矮新星であることが判明しました。観測されたふたやま状の変動は、このタイプの矮新星の増光の初期に観測される「早期スーパーハンプ」と呼ばれる現象であると考えられます。

 この天体は今後も1~2週間、明るい状態が続くと考えられ、その後減光すると思われます。類似の天体では減光後に再増光を繰り返す系もあることが知られていることから、その観点からも注目されます。

参考文献

※お詫び:著者のミスにより、VSOLJニュース No.295, 296で発行番号をあやまってそれぞれNo.294, 295と記載しておりました。特に前者は直後に訂正を出したにも関わらず、その訂正の号数自体もあやまっているという不手際があり、購読/しておられる方々には大変ご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。

2013年4月13日

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