新星は古い時代から「なにもないところに突然」現れる天体として知られてきました。現在ではそれをすべて新星と呼ぶわけではなありませんが、それでも古い時代に爆発したことがある新星というのは数多く知られており、新星が爆発後どのような振る舞いをするのかという観点からも興味を持たれています。
ペルセウス座GKは1901年に増光した新星です。もっとも明るい時には0等級で輝いたとされますから、新星の中でももっとも明るい部類に入るといえるでしょう。新星爆発から100年以上がたち、現在の明るさは13等級前後です。これは、観測するには中程度の望遠鏡が必要な明るさですが、それでも新星爆発をした天体の中で2番目の明るさを持っています。
興味深いことに、この新星は数年に一度、矮新星増光を示すことが知られています。矮新星増光は白色矮星まわりの降着円盤が一時的に明るくなる現象ですが、これは白色矮星への質量移動があまり高くない系のみで起こることが知られています。新星爆発は白色矮星の表面での核反応によって起こるため、爆発の際は白色矮星の表面が熱せられるのですが、これがしだいに冷えていく過程で矮新星増光を示すようになるのです。もちろんかつてのように0等級まで増光するわけではなく、もっとも明るい場合でも10等級程度です。それでも、小さな望遠鏡でも明るくなっているところが確認できます。
今年3月半ば、ペルセウス座GKは3年ぶりの増光を開始しました。3月18日現在、12等台前半に達しています。この天体の増光は矮新星としては異例に遅いスピードなため、平常光度のうちの明るい値にすぎないのか増光を始めたのか、しばらくしないと判別が難しいのですが、3月10日ごろに増光を開始したと推定されます。最近の観測は以下の通りです。
YYYYMMDD(UT) mag observer 20130305.839 130 (Chris Allen、スウェーデン) 20130307.824 131 (Chris Allen) 20130308.866 130 (Chris Allen) 20130309.023 132 (Miroslav Komorous、カナダ) 20130311.810 12.88TG (Robert Fidrich、ハンガリー) このころに増光開 始 20130313.830 127 (Gary Poyner、イギリス) 20130315.024 126 (Miroslav Komorous) 20130316.810 125 (Robert Fidrich) 20130318.028 12.45 (Miroslav Komorous) (TGはデジカメG等級を示します)
上にも少し触れた通り、この天体は非常に穏やかな増光を示すため最大光度に達するまでに1~数ヶ月程度かかり、その後の減光も非常に穏やかなスピードであるために増光自体が数ヶ月にわたります。これは矮新星としては異例ですが、このような現象はペルセウス座GKが矮新星の中では長い軌道周期を持っているためです。そのような系ではお互いの距離が遠いために白色矮星上の円盤が大きく、円盤上に増光状態が広がるのに時間がかかる上に円盤の内側から矮新星増光が始まるためこのような光度変化になるのです。
また増光の様子についても必ずしも一直線に増光するのではなく途中で一時的に暗くなったり光度曲線にいくつかの極大の山を作るなど、さまざまな振る舞いをすることが知られています。これから観測が難しくなってしまう位置なのが残念ですが、比較的小さな口径の望遠鏡でも数ヶ月にわたる増光を追いかけることができますので観測可能な方は望遠鏡を向けてみてはいかがでしょうか。
参考文献
- vsnet-alert 15518, 15526
2013年3月20日