小嶋さんがいて座に新星を発見

著者 :著者:前原裕之(京都大学花山天文台)

7月7日にいて座に明るい新星が発見されたばかりですが、また別な新星がいて座の中に発見されました。この新星はいて座の中に発見された新星としては今年5個目になります。

新星を発見したのは群馬県嬬恋村の小嶋正(こじまただし)さんです。小嶋さんは7月16.512日(世界時)に、焦点距離150mmのレンズをつけたデジタルカメラで撮影した画像から、12.6等の新天体を発見されました。この天体は小嶋さんが6月22日と6月27日に撮影した画像には13.5等以下で写っていませんでした。また、この天体は小嶋さんが行なった翌日の17.598日の観測では12.2等、宮城県の遊佐さんの確認観測(17.993日)ではV等級で12.7等と報告されました。遊佐さんの観測によると、この天体の位置は

赤経:18時 19分 36.94秒
赤緯:-19度 07分 40.2秒   (2000.0年分点)

です。遊佐さんや筆者の行なった多色測光では、波長の短いバンドほど暗く、この天体が赤い色をしていることが分かりました。

7月18日に岡山理科大学チーム(今村さん、小木さん)と岡山県の藤井さんによって、この天体の分光観測が行なわれました。この天体のスペクトルには水素のバルマー系列や、1階電離した鉄、中性のヘリウムの輝線がみられたことから、この天体が古典新星であることが判明しました。また、ナトリウム D線などの吸収線がみられることや、連続光成分が短波長側ほど弱く赤い色をしていることから、この新星は我々との間にある星間物質による吸収や散乱の影響を強く受けていると考えられます。Hα輝線の幅は秒速1000km程度で、新星爆発による物質の膨張速度がそれほど大きくない部類の新星だと思われます。18.88日に分光観測を行なったイタリア パドヴァ天文台のグループ(Munariさん他)や、19日に観測を行なったオーストラリアのBohlsenさんも同様の結果を報告しました。

これまでに報告されている測光観測の結果によると、17.99-18.88日の間にはこの新星はV等級で12.7等から12.2等へゆっくりと明るくなる傾向がみられ、今後の明るさの変化が注目されます。

参考文献

2012年7月21日

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