へびつかい座に新星が出現

著者 :前原裕之(京都大学花山天文台)

私たちの銀河系の中心方向に近いへびつかい座にはこれまで多数の新星が発見されています。今年の3月に西村さんによって新星が発見されたばかりですが、今度はオーストラリアのJohn Seachさんによって別の新星が発見されました。へびつかい座の中に出現した新星としては今年2個目です。

この天体はJ. Seachさんによって、5月19.484日(世界時、以下同様)に50mm f/1.0のレンズをつけたデジタルカメラで撮影した画像から、10.5等級の新天体として発見されました。前日の18.488日に茨城県の清田さん、18.614日に福岡県の高尾さんがそれぞれ撮影した画像には、この天体は13~14等よりも暗く写っていませんでした。この新天体は1日ほどの間に増光してきたと考えられます。E. Guidoさんらによる確認観測によると、この天体の位置は

赤経: 17時 39分 57.00秒
赤緯:-24度 47分 07.3秒            (2000.0年分点)

です。

この天体の分光観測は岡山理科大学の今村さんの他、多数の観測者によって行なわれ、スペクトルに水素のバルマー系列の輝線のほか、一階電離した鉄や中性酸素などの輝線がみられることから、この天体が古典新星であることが判明しました。分光観測から、Hα輝線の速度幅はおよそ秒速3,000kmと報告されており、新星爆発によって膨張するガスの速度が比較的速い部類に入る新星と考えられます。この新星は発見後は急速に暗くなっており、発見直後は10等台でしたが、22日には11.6~11.7等、26日には12.9等ほどまで減光していました。今後の明るさやスペクトルの変化が注目されます。

参考文献

2012年5月28日

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