4月下旬になると夜半過ぎには私たちの銀河系の中心方向に見えるさそり座やいて座などの星座が東の空に姿を現すようになります。そのいて座の中、銀河系の中心方向から北におよそ6度の位置に新星が発見されました。
ロシアのKa-Dar天文台のS. Korotkiyさんと、モスクワ大学のK. Sokolovskyさんは、焦点距離135mmのレンズとCCDカメラを用いて4月21.011日(世界時, 以下同様)に撮影した画像から、9.6等の新天体を発見しました。この天体は発見者らの4月17.99日に撮影した画像には14等以下、オーストラリアのN. J. Brownさんが19.73日に撮影した画像には12等以下でそれぞれ写っていませんでしたが、中国のR. J. Gaoさんが20.84日に撮影した画像には10.2等で写っており、このおよそ1日の間に増光を始めたと考えられます。この天体はオーストラリアのJ. Seachさんや茨城県の清田さんを始め、多数の観測者によって確認観測が行なわれました。西山さんと椛島さんのチームの観測によると、この新星の位置は
赤経: 17時 45分 28.05秒 赤緯:-23度 05分 23.2 秒 (2000.0年分点)
です。
この天体の分光観測はフランスのC. Builさんや、岡山理科大学の今村さん、岡山県の藤井さんによってそれぞれ行なわれ、幅の広いバルマー輝線(Hα線輝線のFWHMはおよそ秒速5,000km)がみられたことから、古典新星であることが判明しました。
この新星は4月22日には9等ほどの明るさで観測されましたが、筆者の行なった23日の観測ではV等級で10.6等、24日には11.2等と早くも極大から2等ほど暗くなっていました。分光観測では、新星爆発によって膨張するガスの速度が速いこと、Hα輝線の形状が複数のピークを持つことといった、速い減光を示す反復新星(例えばさそり座U)の新星爆発時のスペクトルに似た特徴を示すことが報告されており、今後の新星の明るさやスペクトルの変化が楽しみな天体と言えるでしょう。
参考文献
・新星の画像
・新星のスペクトル
2012年4月25日