西村さんがへびつかい座に新星を発見

著者 :前原裕之(京都大学花山天文台)

 3月になると明け方にはもう夏の星座であるいて座やさそり座、へびつかい座といった、私たちの銀河系の中心方向に見える星座が南の空に見えるようになります。そのへびつかい座の南、銀河中心方向から5度ほど離れたところに、12等の明るさの新星が発見されました。

 新星を発見したのは静岡県掛川市の西村栄男(にしむらひでお)さんで、3月25.789日(世界時、日本時間では26日早朝)に、焦点距離200mmのレンズとデジタルカメラを用いて撮影した画像から、12.1等の新天体を発見しました。西村さんは翌26.796日に撮影した画像にもこの天体が写っていることを確認しました。また、高尾さん、清田さん、遊佐さんらによってもこの天体の確認観測が報告されました。群馬県の小嶋さんは、この天体が20.784日に撮影した画像には13等以下で写っていなかったものの、発見前日の24.785日に撮影した画像に12.2等で写っていたことを報告しました。新星はこの4日の間に増光を始めたと考えられます。

 この天体のスペクトルの観測は、3月27.74日に京都産業大学 神山天文台の口径1.3m荒木望遠鏡を用いて新井さんと磯貝さんによって行なわれ、HαやHβ、1階電離した鉄、中性酸素の輝線がみられたことから、この天体が古典新星であることが判明しました。またHαや、鉄、酸素のスペクトル線の形状が、P Cyg型プロファイルと呼ばれる、膨張するガスによる青方偏移した吸収線を伴なった輝線であることも報告されました。岡山理科大学の今村さんによる分光観測でも、Hα輝線がみられたことが報告されています。分光観測の結果によると、この新星は爆発によるガスの膨張速度が遅い新星であると考えられ、今後の光度変化やスペクトルの変化が注目されます。

遊佐さんの観測によると、この天体の位置は

赤経:17時26分07.02秒
赤緯:-25度51分42.5秒 (2000.0年分点)

です。

参考文献

新星の画像

新星のスペクトル

2012年3月28日

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