板垣さん、ペガサス座に新たな矮新星を発見

著者 :大島誠人(京大理)

 いよいよ梅雨入りとなり、天気が悪く星の見えない日が続いていますが、そんな中でも新天体の捜索と発見は着々と行われています。このたび、ペガサス座に新しい矮新星が発見されました。

 発見したのは、新天体の捜索で有名な山形市の板垣公一さんです。2011年5月24.6991日に捜索観測をおこなっていたところ、11.5等(CCDノーフィルター)の新天体を発見し、60cm反射望遠鏡によって確かに新天体であることを確認、報告されました。正確な位置は、

21時09分50.47秒
+13度48分39.6秒 (2000.0)

です。

 これをうけてアメリカ合衆国のE. グイドさん、G. ソステロさんらが確認観測を行い、確かにこの位置に新天体していることが確かめられました。また新井彰さん(京都産業大)による分光観測から、この天体が矮新星の増光であろうということが判明しました。

 上記のグイドさんら及びD. デニセンコさんによると、この天体が観測された位置には増光前の天体と思われる18.82等(R等級)の天体があるということで、これが母天体であるとすれば増光範囲は7~8等前後ということになります。これは矮新星としては非常に大きい値です。このことから、この天体が矮新星の中でも特に大きくまれな増光を示すサブグループであるや座WZ型矮新星である可能性が示唆されています(や座WZ型矮新星についてはVSOLJニュースNo.67、No.255などを参照)。極大光度が11等というのは矮新星としてはかなり明るい部類の天体であり、そのような天体がこれまで未発見だったということからも増光頻度はかなり少ない可能性が高いこともこれを裏付けています。

 この時期には夜半過ぎにしか上ってこないということでやや観測しにくい天体ですが、特殊な天体である可能性が高いということもあり、梅雨の間をぬっての観測がぜひ求められる天体です。

参考文献

2011年5月31日

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