いて座に今年初の銀河系内新星

著者:前原裕之(京都大学花山天文台)

いて座やさそり座、へびつかい座などは私たちの銀河系の中心方向に見える星座で、これまでに多数の新星が発見されています。毎年1月中旬~下旬にかけて、夜明け前の東の空に夏の天の川が見えるようになると、新星発見のシーズンが始まります。2011年最初の銀河系内新星がいて座の東に発見されました。発見されたのは、静岡県掛川市の西村栄男(にしむらひでお)さんで、これまでにも多数の新星を発見されているベテランの天体捜索者です。

西村さんは、1月25.86日(世界時)に200mmレンズとデジタルカメラで撮影した画像から、11.2等の新天体を発見されました。また、西村さんは、この天体が昨年撮影した画像には12.5等より暗く写っていなかったものの、今年1月17日と24日に撮影した画像にはそれぞれ11.5等で写っていたことも報告されています。この天体は清田さん(茨城県)、遊佐さん(宮城県)、門田さん(埼玉県)によって存在が確認されました。遊佐さんは30cm望遠鏡によって撮影した画像から測定したこの天体の位置を

赤経: 17時47分46.22秒
赤緯:-23度35分13.7秒    (2000年分点)

と報告されています。

この天体の分光観測は、1月29日早朝に京都産業大学の神山(こうやま)天文台の1.3m荒木望遠鏡と、岡山理科大学の28cm望遠鏡でそれぞれ行なわれました。得られたスペクトルには水素のHαとHβ輝線、酸素の輝線がみられることから、この天体は極大を過ぎた古典新星であることが判明しました。また、この天体は赤い色をしていることが分光観測や測光観測から指摘されており、銀河系内のガスやチリによる吸収を強く受けているものと思われます。今後の光度やスペクトルの変化の様子が注目されます。

参考文献:

2011年1月30日

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