アンドロメダ座大銀河M31は、私たちの銀河系よりもやや大きい恒星の大集団で、私たちからおよそ250万光年の距離にある、最も近い大規模銀河です。私たちの銀河系では、銀河面にある星間物質によって光が吸収されてしまうため見通しがきかず、発見される新星は私たちの近くに出現するものに限られます。一方、M31では銀河全体が見渡せるため、サーベイ観測が強化されたここ数年は、私たちの銀河系よりも多い年間20個以上の新星が発見されています。
M31までの距離は銀河系内で発見される新星までの距離と比べてはるかに遠いため、ほとんどの新星は最も明るい時期(極大)でも17~18等程度と暗く、15等より明るいものはこれまで数個しか見つかっていません。このたび発見された新星M31N 2011-01aは現在までに報告されている観測結果によると14等台まで明るくなっており、M31に出現した新星の中でも特に明るい部類に入るものです。
この新星を発見したのは福岡県久留米市の西山浩一(にしやまこういち)さんと佐賀県みやき町の椛島冨士男(かばしまふじお)さんのチームで、1月7.432日(世界時)に口径40cm望遠鏡を用いて撮影した画像から、18.4等で発見したものです。宮城県大崎市の遊佐徹(ゆさ とおる)さんも同じく1月7日に30cm望遠鏡で撮影した画像から独立にこの新星を発見されている他、中国、チェコのグループからも独立発見が報告されています。西山さんと椛島さんのチームによるこの天体の位置は
赤経 00h 42m 42s.60 赤緯 +41°19' 14".4 (2000.0年分点)
です。この天体は発見後も増光を続け、確認観測などで報告されたこの天体の明るさは以下のようになっており、11日には15等より明るくなりました。
8.484日(世界時) 17.7等 (門田健一、埼玉県) 8.788日 17.1等 (Hornoch他、チェコ) 9.11 日 16.7等 (Super-LOTISチーム, アメリカ) 10.481日 15.2等 (小石川正弘、宮城県) 11.20 日 14.9等 (Super-LOTISチーム)
この天体の分光観測は、昨年完成したばかりの京都産業大学の口径1.3mの荒木望遠鏡を用いて1月11.49日に行なわれ、膨張するガスによる青方偏位した吸収線を伴なう水素のバルマー系列の輝線や一階電離した鉄輝線がみられたことから、この天体が極大近くの古典新星であることが判明しました。
M31に出現した新星で15等よりも明るいものは珍しく、今後の光度やスペクトルの変化の様子が注目されます。
参考文献:
- CBET 2631 (2011 January 11)
- 遊佐さんによる新星の画像
- 京都産業大学 神山(こうやま)天文台で撮影されたスペクトル
2011年1月13日