年末年始に新変光星の発見

著者 :山岡均(九大理)

年末年始は全国的に荒天でしたが、天文愛好家の方々はそれを縫うように新しい天体を捜索・確認しておられます。昨年末の12月29日夕方に、ベテランの新星捜索者である静岡県掛川市の西村栄男(にしむらひでお)さんが発見された新しい変光星では、その協力体制が大いに活躍しました。

西村さんは、29.40日(世界時、以下同様)に、デジタルカメラに200mm望遠レンズを用いて撮影した画像に、11.5等級の新星とおぼしき天体に気付きました。遡って、25.39日に撮影した画像を点検してみたところ、同じ位置に13.7等の星が写っていました。西村さんが測定した新天体の位置は、

赤経  23時04分25.83秒
赤緯  +6度25分45.8秒  (2000年分点)

でした。うお座の西端部にあたります。

この連絡を受けた兵庫県洲本市の中野主一(なかのしゅいち)さんは、西村さんの発見画像を再測定し、新天体の明るさを13.7等ほどと見積もりました。また、埼玉県上尾市の門田健一(かどたけんいち)さんは、31.37日に自ら撮影した確認画像上で、この天体が13.8等であったことを報告しています。どうやら、西村さんが報告された発見時の明るさは、少し明るすぎたようです。

新天体の位置を、昔の画像で調査してみると、かすかな光点が記録されています。2005年に撮影されたスローンデジタルスカイサーベイ(SDSS)では、この星は21等級ほどで、かなり青い色をしていました。7等級ほどの増光ということで、古典新星と矮新星のいずれなのかに注目が集まりました。

年が明けて1月1.74日に、イタリアの研究者グループがこの天体の分光観測を行ないました。新天体は、青い連続光に水素の吸収線が目立つという、降着円盤が明るく輝いている状態を示しており、この天体は極大期の古典新星ではなく、や座WZ型のような増光幅が大きい矮新星の増光であろうと考えられます。今後の光度変化など、動向が楽しみです。

新天体は、単に発見されるだけでは価値が薄く、確認や調査によってその姿が明らかになっていくことで、天文学への貢献となるものです。国内や国際的な連携によって、発見された天体の素姓を解明することが重要です。

参考文献:

2011年1月2日

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